井上史雄 『日本語は生き残れるか――経済言語学の視点から』(PHP研究社),
読了。国際化が進む中,世界の言語間に何が起こりつつあるのか,日本語が置かれた現状とは,その未来予測とは。他言語との詳細なデータ比較や実例に基づく分析。個々の言語が持つ市場価値という視点から現状の地球上のコトバのダイナミズムを探る。そんな本。言語というと,誰もがすぐにアツクなるし,根拠がありそうで,実は結構危ういことを声高に主張しがちだけど,この本はその正反対。主観とか主張とか,そういうのがあまりない。経済学を研究するのに個々人の欲望が捨象されるのにちょっと似てる。数字を分析して傾向を探る。かつて言語は政治に強く影響されたけど,いまや言語間に起こっていることにしろ,特定の一言語内に起こっていることにしろ,それはむしろコスト最小化への動き。文法は単純になる方向,他言語と似通う方向にあり,日本語も例外じゃない。
付け足しのように書かれた最後の章で,「日本語は生き残る」と何気なく書かれているけど,本が売れない今の時代らしく,実は書名と内容の乖離は結構ある。もちろん日本語が生き残るかどうかのデータは豊富にあるけど,あまりそこに焦点があるという感じはしない。少なくとも,それを書くことが著者の執筆の動機だったとは思えない。著者自身,日本語が未来にわたって生き残るかどうかの予測なんてのは,経済の長期予測とか天気の長期予報のようなものだと書いている。
それにしてもコトバが気になる。きりがない。きりをつける必要もないけど。頭の中に言語学に関する表層的な知識の雑煮ができつつある気がする。しょせん雑学だけど,日本語とか英語というのが一体何なのかが,ぼんやり見えて来た。