2001/10/01(Mon)
最後の階段
いつもと違うローンドロマットで洗濯。仲良さそうに話し込んでるご近所さんの話声と,洗濯機のまわる音を聞きながら,日のあたるベンチで本を読む。少し汗ばむほど。これがインディアンサマーらしい。9月中,サンフランシスコ近辺では突如として2,3日間〜1週間程度,とても暑くなる。
カルトレーンに乗るのも,少なくとも今年はこれが最後だなと思いつつ,南へ下る。サンノゼへ。サンフランシスコもこのところ爽やかな夏だけど,サンノゼはまた一段と爽やかな気候。サンノゼ駅前,木陰のバス乗り場で飛び交う飛行機をぼんやり見上げる。
「10月なのにこの暑さは何なの!」と,冬には雪が降りまくるボストン育ちの彼女は芝生に寝転ぶなりそう言った。えーっ,グレートな天気じゃない。こんな爽やかな気候に文句を垂れるとバチがあたるぞ。
久ぶりに会う彼女とテロについて話しはじめて,ビックリ。話すのが妙に楽。いつの間にかまた階段を1つ昇ってた自分に気づいた。渡米してから,今までに5,6回ぐらい「あれ? なんか変わった。前より英語がワカル! イケる!」と思う瞬間があったけど,最後に昇る階段が,意外に大きくて驚き。ペラペラにはほど遠いけど,言いたいことが結構言える。驚きと嬉しさで,しゃべりまくる。
「はじめて会ったときのこと覚えてる?」と昔話。たった数カ月前なのに,そうは思えない。ビールを飲みながら,彼女はぼくの英語にグレードAをくれた。確かにはじめて会ったころ,彼女の英語は2,3割くらいは良く聞き取れなかったし,たまに質問する以外ほとんど聞いてるばかりで何も話せなかった。いつのまに気楽に構えて話せるようになったんだろう。言い淀みや言い間違いをいくつもしながらも,それでも話をはじめることに全然抵抗がないし,ぽろぽろと言葉が出て来る。そして会話の幅が,今までにない広がり。驚いた。
英語学習に関して,階段を昇った感触に喜んだり,それでも全然ダメだと絶望的な気分になったりというのを繰り返して来た。たぶん,まだまだ繰り返すはず。ダメだと思うたびに,それは方法論が間違ってるからダメなのか,それとも単に時間がかかるというだけの問題なのかでずいぶん悩んだけど,やっぱりヒトコトで言えば「It takes time.」。外国語学習は時間がかかる。
たけど,やっぱりぼくの学習方法は間違ってなかったんじゃないかと思う。たぶん最短距離からそう遠くないところを歩いてる(走ってないってところが,ぼくの渡米生活の夏休み的なところ)。少なくとも,前に進んでるという実感が,モーティベーションを保つうえで大切。語学学習とは「くんでもくんでも水がこぼれてしまうザルを使って,風呂桶を満たすような気の遠くなる地道な作業」という言葉は,本当なんだろうと思う。
必要なのは大量のインプットとディテールの学習。後は続けること。時間。日本に戻っても,今の2,3割のペースで語学力を伸ばせるんじゃないかと,そんな気がする。
2001/10/02(Tue)
ジジミパーティー
日本語で「ちじみ」と呼びますが,ハングル文字のスペルでは「zizimi」。1音節目と2音節目が,基本的に同じ音なのに,なぜか日本語では違う。「chijimi」でも「zijimi」でもなく,「zizimi」。ただ,この「z」は英語の「z」じゃなく,「z」と「j」の中間くらい。どうも韓国語には「j」と「z」の音の中間しかないようで,彼らは,exampleをegjampleと発音しがちだし,zokeとjokeの区別がつかない。
ウニョンの手作りチジミパーティー。ウニョンの新しい彼氏やタイ人の元クラスメートやミスターサトーも一緒。来るはずだった,ぼくの日本語の生徒であり英語の先生であるモニカは急な仕事で来れなかった。
プロのピアニストになりたかったというウニョンが弾くショパンは,彼女の話す日本語のよう。うまいんだけど,微妙にミスが混じり込む。表現に問題はないけど,たまにリズムが間延びする。
ヤキモチ焼きで心配性のウニョンの彼氏。誰も誘ってないのにいきなり来ることになったってのは,どうも彼女の「ご交遊関係」を心配してのことらしい。
「ふんっ,ケツの穴の小さい奴だな」と,かなりネガティブなイメージを持ったけど,これが会ってみると知的でハンサムなナイスガイ。フィナンシャルディストリクトの株関係の会社で働く28歳。同じ歳のウニョンが,ソファにゆったりと腰かけた彼の足に,猫のように甘え,寄り添う。その姿がなんだかとてもスィート。
2001/10/03(Wed)
ただでワイン,ワイン,ワイン
銀行に口座をクローズしに出かける。Bank of Americaの本社ビルに入ったら,警備に止められた。「ここからは入れませんよ」。そっか,サンフランシスコを狙うとしたら,このビルかもなと思いながら迂回。
「口座閉めたいんですけど」。カウンターのおじさんは「えっ……,閉めたい!? 閉めちゃうんですかぁ?」と冗談めかしたアメリカンなノリ。「化学兵器,恐いですからね。この国を離れて日本に帰るんですよ」と,ぼくもややアメリカンぽく受け答え。日本の銀行じゃあまりなさそうな会話のやりとり。「こういうのも悪くない」と思いはじめてた自分に気づく。
事務処理はやっぱり遅い。口座を閉めて金を出すだけで,なんで15分もかかるんだ。2回も3回も金額をぼくに聞くな。と,思う一方で,そういうのにも慣れっ子になってる自分に気づく。
札束(って$200くらいだけど)を握り閉め,チャイナタウンへ。胸もとに星条旗がひらめき,「We attack back!」とデカデカと書かれたTシャツをおみやげに買う。
ぼくよりちょっと遅め,もうすぐ帰国というヤスコちゃんとカレー。このマトンカレーともサヨナラか,と。いや東京にもインド料理は多いけど。
ジャインとCheese Cake Factory。アンディが来ない。まあ,またウルウルされてもかなわないし。
夕方,リカさんの誘いで,カクテルパーティ。こんなよれよれのシャツで行ってもいいのかしらと思いつつ。
「Oh, we are going down the list. We've not gotten there yet」。アルコールが入って嫌にテンションの高いマイクが,知り合いにお勧めワインを教えてもらうなり,そう答えた。リストには今年賞を受賞したワインが20種類以上。飲めば飲むほど饒舌になるマイクの反応は2種類しかない。「うわっ,まォ〜ずいよ」「これ,ウゥマイっ。This is the best so far,ボクこれすっきだよ」。いくら周囲が日本語が分からないからって,「まぉーずぅーいっ」って言いながら顔をしかめたらダメだよって。
ワインも食いものもウマイ。さすがに,「Wine&Food」と名乗る雑誌が主催してるだけのことはある。昼のカレーがなければ,もっと食えたのにと,ちょっと後悔。
シノさんの部屋へテレビ,その他,不要品を運ぶ。運ぶ運ぶ。なんでぼくの部屋にヌイグルミがあったんだろうと思いながら,人に押しつける。夜1時,パッキング完了。
2001/10/05(Fri)
帰国しました
低く厚い雲を抜けて,飛行機が降下する。窓外を見て驚く。「暗いっ!」。15時なのに,この暗さは何なんだ。くもりぞら。
飛行機が止まる。飛行機からイキヨウヨウと空港のビルに入る。「Oh my god! It's so humid!!」。あまりの暑さと湿っ気に驚く。気温で言えば,東京もサンフランシスコも,いまの時期はそう変わらないはずだけど,異様に暑く感じられる。東京はこんなにもジメジメしたところだったのか。建物の中でさえ,ものすごい湿っ気。
成田エクスプレスの窓外に流れる千葉の風景が,東京に近付くにつれて,だんだん懐かしく思われて来る。それにしても,ぼくには嵐の中にでもいるとしか思えない暗さと視界の悪さ。
新宿駅に到着し,人ごみの中を歩く。自分だけが嫌に遅いペースで歩いてることに気づいた。なんだか人の流れに置いていかれそうで不安。それにしても,すごい量の人人人。
周囲が全員日本語を話してることに改めて感動。キオスクにある雑誌は全部日本語。新宿からタクシーに乗り,タクシーの運転手さんと話す。驚くほど日本語が通じる。甲州街道から方南通りに入り,家が近付くにつれ,「Finally, I'm home. I'm back.」という言葉が頭の中でリフレインする。
2001/10/07(Sun)
詐欺やんか!
新宿,タイムズスクエアにあるコーヒーショップで,コーヒーを飲んでショック。350円も払って,極めて小さなカップ,そして半分しか満たされてないという量の少なさ。「いやエスプレッソじゃなくて,ふつうのコーヒーを頼んだんですけど」と言いそうになるほど。しかも量が少ないだけじゃなく,まずい。ショック。
ロイヤルホストのクラブハウスサンド。びっくり!! 詐欺みたいに小さい! そして,ポテトは抜け落ちたお岩さんの髪くらいしか量がない! サラダが4,5口で終わってしまう!
コンタクト作成。やっぱりアメリカよりずっと安い。特に検診料がね。保険がきくし。かなり視力が落ちてることにショック。もはや裸眼生活は無理か。少なくとも裸眼運転はヤバい。
「だって,そんな大切なところが再生しなかったら大変でしょう」と目医者さん。そっか角膜上皮細胞って再生するのね。知らなかった。目って,生まれてから死ぬまで,ただ悪くなる一方の臓器だと思ってた。ぼくの左目の角膜はいま,やや傷ついた状態らしい。
2001/10/08(Mon)
自転車!!
道が狭い! ガードレールで歩行者を保護するのって,すごいよな。山手通りって広い道だと思ってたけど,サンフランシスコ市内だと,一通の幅。
車の運転してる人が,歩行者にやさしくない! なんで止まらないの?
自転車が恐い! 歩道をびゅんびゅん走る自転車って,結構こわい。ママチャリ文化,なんか中国みたい。
空気が滅茶苦茶汚い! 道路沿いでは息をしたくないです。息をするたびに鼻と肺が真っ黒になる感じが分かる。ディーゼル反対。
暗い! 晴天かもしくは朝夕の数時間の霧という気候の中に1年間いたものだから「くもり」がものすごく暗く感じられる。空が低い。
明るい! 薬局は明るい。日本はどこも蛍光灯で明るい。
暑い! 街を歩いてる中で,ぼくだけ季節はずれみたいに半袖Tシャツ1枚だけど,どう考えても暑い。
ジメジメ! 日本に出張で訪れたマイクが「日本はhumidだよ。あれに慣れるタイヘンだよ」と言ってたの,大げさな話じゃない。30年も,そういう気候で育ったぼくが,1年カリフォルニアに住んだだけで,こう思うのだから。日本ってやっぱりモンスーン気候ってか,アジアってか。亜熱帯ってか。
店員が丁寧! コンビニもスーパーも,ファミレスも丁寧だ。そして,ぼくの日本語は滅茶苦茶通じる。
日本人って日本語も英語も下手な人が多い! スチュワーデスや空港,駅構内アナウンスやら,InterFMのバイリンギャルの英語を聞いてて,「あれ,なんかヘンだぞ」と思ったり。NHKの中東特派員の日本語を聞いて,「あれっ,日本語だいじょうぶ?」と思ったり。アメリカ人は英語がうまいと思うけど,日本人って,日本語があまりうまくない気がする。平均として。
日本人って小さい! 人のこと言えないけど,やっぱりみんな小さいなって。
日本の女の子は小さくて可愛い!
ワカモノの髪がヘン! 茶色かったり,金髪だったり,ともかくヘン。かなりヘン。
サラリーマンのスーツがヘン!
みんな携帯ぷちぷち! ケータイでパックマンが動いてるよっ! すごい!
納豆がうまい! 松屋で納豆。感動。キリンビールとネギ味噌チャーシューにも感動。
小泉首相の答弁がヘン!
カタカナ多用の広告,看板がヘン! 日本語って,なんなの一体? 英語? 中国語?
ADSLが速い! なんでWebサイトがみんなFlashなんだっ! AirH"って,なんじゃらほい。
英語がないっ! キオスクにある英語の新聞って,日本発のモノ。小さな本屋には英語の本って何もない。衛星かCATVか契約しないと。
タバコの煙がモクモク! 普通のレストランやビルの中でタバコを吸ってる人がいたのにはびっくりした。
まだまだ「びっくり」はあるけど,このへんで。
2001/10/09(Tue)
カフカの『城』のような気分
免許更新で鮫州へ。長期海外滞在は例外的な扱いを受けられると聞いてたけど,どうもぼくの理解は違ったらしい。期限が切れたら失効は失効。ただ,その失効後,試験が免除される猶予期間が通常は6カ月のところ,海外滞在や病気やケガによる入院という事情がある場合,3年やら5年くらいは伸ばしてもらえる,ということらしい。ぼくの場合,1カ月なので,海外にいただのなんのは関係ない。
で,ぼくの免許は失効してたので,住民票が必要になる。ところが案内係の人の説明が,さっぱり理解不能。「ただ,私がこの場で,住民票が必要なので今日のところはお引き取りくださいとは言えないんですね」と言う。
「えっ,でも住民票がないことには,今日は手続きできないわけですよね?」「はい,そうです」「だったらぼくは出直すしかないんじゃないですか?」「いや,そうなんですけど,そういう話は上の者でないとできないんです」「はっ? あなたは100%自信を持って今日ぼくが免許の更新をできなって言えるわけですよね,住民票が必要って知ってるわけですよね?」「そうなんですが,私はあくまで案内役であって,そういうことは上のモノからじゃないと,言えないんです」。
まったく意味が分かりません。
失効のさい,試験を再度受ける人と同じだけの更新料金がかかるというのも納得できないし,意味不明の会話を続けても仕方ないので「上のモノ」のところへ案内してもらって話を聞く。
50がらみのおじさん。口をきいた瞬間に「この人は,ぼくをわがままなバカモノ扱い」してることが分かる。こういうとき,若く見えると損だと思う。「あなたのさぁ,免許は失効してるんだから,お金を払うのっ! 分かる!?」
「いや,ちょっと待ってください。失効してるのは分かりました。私が聞いてるのは更新料金のことです。なんで受験免除なのに,試験を受ける人と同じ値段を私は払うんですか?」。「まぁだ,そこまで話してないって。順に説明していきますから。ね,分かりますか」。分かってないのはあんたじゃないか,ぼくが聞きたいのは,ものすごく単純なコトですよ。
顔はニコニコしながらも頭の中はキレそうです。よほど普段,馬鹿とつき合い疲れてるんだろうか。なんで,こうも人を馬鹿扱いするんだろう。向こうはこっちを単なるイチャモン付けに来た若造だと思ってる。なので頭ごなしの要領を得ない説明。
ようやく説明が得られたことから分かったのは,失効後,受験免除の人が支払う料金は,再受験が必要な人が払う受験代金は含まれていないということ。なんだ納得。それを聞きたかっただけなのに。しかし,登録料が普通の更新料より,4000円ほど多くかかる。この値段の根拠が分からない。なんでそんなに高いんだ?
「内訳は分かりませんか? 4000円って滅茶苦茶高いと思うんですが」「これは法律で決まってて,こういう値段なんですよっ」。
納得いかん。たかがデータベースのレコード更新で,なんで4000円もかかるんだ。紙の書類をあーだこーだやってた時代なら,人件費やらで,そんなこともあるかもしれないけど,たかが端末に住所を打ち込むだけで,なんで4000円? ツタヤみたくきめこまやかなカスタマーデータベース管理をやってても,新規加入って数百円って世界でしょ?
ぼくだってちゃんと納税して行政サービスを受けてる市民だから,こういうのって,知る権利があると思うんだけど。と,いいつつバイクの重量税は滞納してるんだけど。うむー。
駅の公衆電話から104の番号案内。区役所の電話番号を調べる。「テレホンカードの度数はジュウございますか?」「えっ,10ですか?」「はい,そうですが?」「100円っ!! いつから100円になったんですかッ?」
カフカの『城』の気分です。あるいは『世にも奇妙な物語』で,突如パラレルワールドに入り込んだような。見慣れたように見える世界なのに,ぼくの知らないところ,ぼくのあずかりしない法則で動いてる。ここは日本じゃなくて,ニホンなのかもしれない。
マイクが言った。「日本は何でも高い。でもね,なんでか分かったよ。人を使い過ぎだよ。タカシマヤに行っても案内のための人がいたり,何にも売ってない人がたくさんいたり。おっかしぃーよ。It's crazy,too muchね」。
日本はあらゆる場面で人件費を削る必要があるというのは,かなり当たってるのかもしれない。
2001/10/11(Thu)
久々のインタビュー取材
朝,動かないバイクを近所のバイク屋へ押していく。錆びててタイヤの回りが悪い。やたら重い。汗だくになり,休み休み。
電車に乗ると,半袖Tシャツ1枚なのは,ぼくだけ。どう考えても,ぼくは暑いと思うんだけど,やっぱりこれって「慣れ」だったんだと思う。サンフランシスコに行ったばかりのころ,なんで周囲がみんな薄着で平気なのかと不思議に思ったけど,そういう環境に長くいる間に,いつのまにか,自分も薄着になっていたらしい。どうりで最初のころは風邪ばかり引いてたわけだ。
Linuxを搭載した腕時計の取材。記者発表の後,メーカーの開発者にインタビュー。編集長と記事担当の副編集長について行った形で,あまり口を挟むタイミングがなかったけど,久しぶりのインタビューにやや緊張。大きなテーブルを囲む形で,相手が10人近くいたというのが,なんだかちょっと。
取材後,次のアポの時間に遅れ気味の編集長が地下鉄の中から,メールの送受信。バタバタ。
仕事に戻るんだなぁ。そういえば,アメリカから戻ったばかりのころ,久しぶりに会う友達に歩くのが嫌に遅くなったと言われたけど,1週間経った今,ぼくの歩く速度はすでに元通りじゃないかと思う。
新宿でケータイ買う。だいぶ迷ったけど,AirH"は見送り。とりあえずFeelH"を買いました。
2001/10/12(Fri)
背中に羽根がはえました
バイク修理が完了。ヘルメットを持って,いざバイク屋へ。なぜか手袋が見つからない。出かけようとバタバタしてるときに,左のコンタクトを落した。
結局,キャブレターのオーバーホールとバッテリ交換なんかで2万4000円。ブレーキパッドのゴムが硬化してたり,前輪を支えるシリンダの錆びがひどくて,交換が必要になるかもという話。家は人が住まないとダメになるけど,バイクは人が乗らないとダメになる。こんなことなら,バイク好きの知り合いに預ければ良かった。月に1度でも乗ってもらえてれば,それでOKだったろうに。
エンジン音に軽い金属音が混じるようになったものの(説明を聞いたけど原因が何かは忘れた),バイクは快調に走る。埃まみれ,錆びまみれで1年近くも放置されてた1週間前の姿からは想像できない。商売だと言えば,そうかもしれないけど,ちゃんとバイク屋のお兄さんは,あちこちの錆びを紙ヤスリで落してくれたらしい。こういうところが,いかにも日本的だなって思うし,ぼくは良い文化だと思う。
自賠責保険のお金が足りなかったので,保険が切れたまま走り出す(って違法だ)。「お気をつけて」というバイク屋のお兄さんの声を聞くころには,はじめてバイクを買って,そのバイクを乗って帰ったあの日のような緊張感が全身に走る。
ウィンカーを出し,来るはずもない後続車の様子を何度も何度も確認しつつ,アクセルを回す。どきどき。どうもギア操作に自信がない。いったんエンジンを止め,ミラーの角度を調整する。うまく走れるかしら。幹線沿いのバイク屋だから,まずは幹線沿いに走るしかない。「この先,ぼくはどこで右折すればいいんでしょうね」とバイク屋に聞く顔が,やや情けない。
えいやっで走り出してみると,手と足が勝手に動きだしてギアをグングンと上げはじめる。あっというまに時速50km。まだおそるおそるだけど,ちゃんとバイクを動かせるということに急に安心。そして久しぶりのバイクのパワーに感動。
まだ東京の湿っ気に慣れないけど,ややひんやりする夜の空気の中を,すいすい走って行くのは,やっぱり気持ち良い。背中に羽根が生えた気分で,新宿方面へ走る。それにしても,空気が悪い。バスの後ろで信号待ちするとき,喉の奥に黒い粘液が溜っていくのが分かる気がした。夜でこれだから,昼はもっとひどいだろう。
モウレツに物欲が湧いて来る。もともと部屋に冷蔵庫を買わなかったのも,部屋を部屋らしくしようともしなかったのも,「いずれ渡米して,その後はどうなるか分からんし。お金使いたくない」という思いがあったからだけど,当面は今の部屋か少なくとも似たようなところに住むことになりそうだし,ちょっとは居住空間を快適にしてみようかと。
冷蔵庫(小型2ドア),コーヒーメーカー(ミル付き),ソファベッド&テーブル,大型テレビ(CC機能必須)なんかが欲しい。リージョン2が見れるDVDも買わないと。Webでカタログサーフ。オークションサーフ。Yahooオークションを見てると,かなり良い品物が出てる。それにしてもDSLは速くて十分カタログを眺める気になる。新しい電子辞書も欲しい。AthlonXPも欲しい。と言ってると,とてもじゃないけど金がない。CATVも引くし。
feelH"の説明書をひととおり読み,機能を試す。良くできてるなぁ。すごい。早速ウタダの着メロをダウンロードし,待ち受け画面用の画像を自分宛てにメールして登録。USB通信ケーブルはLinuxではNG。CDC ACM(Communication Device Class Abstract Control Model interface)の普通のUSBモデムに見えるかと期待して買ってきたけど,どうやら,Windows側からはcomにつながったモデムに見えるんじゃなく,TAPI経由ということで,なんか特別のソフトがいるらしい。というか,冷静に考えてみれば,電話にモデムはついてないし,ケーブルにもついてない。ということは,これって,本体側のCPUを使った,ソフトモデムってことじゃないのかしら。だとしたら,使えるわけがない。
2001/10/17(Wed)
祝・ADSL開通
保険だ住民税だ厚生年金だで,月々5万円ちょっとかかる支払いを,休職期間中は会社に肩代りしてもらっていた。その数カ月分の支払い請求が一気にきた。がーん。
すでに開通してなくもなかった自宅のADSLではあるけど,自分のマシンでつないだのは今日がはじめて。あれこれやって,ようやく開通! ずっと渡米中に使ってたノートPC上でpppoeをソースからmakeしてようやく。デスクトップ環境はまだ何にも手付かず。そもそもデスクトップPCのほうは,急にモノクロ表示になったり,Xの表示が乱れたかと思ったらハングしたりと,ビデオカードの挙動がおかしい気がする。PCIのViRGE DXという5世代くらい前のカードは,やっぱり交換したほうが良さそうか。
後は会社のマシンを何とかしないと。それより,自宅でメールの読み書きをするのに,ダイヤルアップが必要だという,この悲しい状況を何とかしないと。
仕事はすっかり普通に始まってしまったし,元の生活に慣れつつあるけど,パソコン環境が落ち着かないことには,どうも何もかも落ち着かないという気がする。
2001/10/19(Fri)
目に穴があいた
たぶん,会社からの帰りがけ,焼肉屋に寄る途中までバイクに乗ってるときに目にゴミが入った。カルビをつまみながらも,ずっと目が痛いとは思ってた。いつにもましてゴロゴロ感がひどいし,シツコイと思いながらも,今日は横着してコンタクトを外して目を洗わなかった。
帰宅してコンタクトを外す。鏡を見てみると,眼球の表面,真ん中の上のほうに丸く小さな穴があいていた。ゴルフボールのディンプルのようにポッカリと。小さいながらも,はっきり目で見て分かるほどの穴。びっくり。ショック。
眼球にこれほど見事に穴ぽこがあくなんて,想像したことがなかった。穴がある場所以外は美しい。眼球表面というものが,極めて滑らかな,透明で均質な物質に覆われてることに,穴があいてはじめて気づいた。
人間の身体は7年も経つと全身の細胞が入れ替わるという。7年という数字は,医学的根拠があるというより,「中国では古来からそう言われて来た」というような数字って気がするけど。
で,何年経っても入れ替わらないところがあるという。その例外は2つ。それは眼球と女性の卵細胞。この2つだけは生まれてから死ぬまでずっと同じ。成長も再生もしない。赤ん坊の目がクリクリと可愛いく見えるのは,大人と同じサイズの眼球が子どもの顔にはまってるからだという。
眼球表面に傷があるということは,そこを通る光が結ぶ像が,本来網膜に結ぶべき像とは違ってしまうということ。ゆがむということ。で,眼球は壊れたら,それでオシマイ。傷ついたら治らない。滑らかな曲面がいったんデコボコしてしまったら,そのデコボコは,涙で埋めようが,表面にコンタクトをはめようが,屈折率が違うのだから,もう矯正できない。
目というのは,それくらい繊細な器官だと思ってた。でも実際には眼球のもっとも外側の薄い膜,角膜上皮細胞と呼ばれる部分だけは再生するという。2週間ほど前に,コンタクトを作るために眼科にかかったときに,そう聞いた。「左目の角膜が傷ついてますねぇ」「えっ,それって一生治らないんですか?」「いや,治りますよ」「でも,眼球って再生しないんですよね?」「いや,角膜上皮細胞だけは再生能力があるんだよ。だって,君,そんな大切な器官が再生しなかったら大変だよ」「なるほど,言われてみればそうですよね。ジャングルでシダ植物が目に刺さったぐらいで視力が低下するようなサルだったら,とっくに絶滅してますよね」。
眼科医との会話を思い出しながら,鏡を見る。穴は結構深い。
角膜「上皮」というからには,かなり薄いんだろう。果たして,今ぼくが見ている傷は,その上皮部分で済んでるんだろうか。それとも,傷はもっと深いんだろうか。ジッと鏡をのぞき込む。鏡に映った左目の穴を見ているのは,ぼくの左目なのだろうか,右目なのだろうか。穴を見てるけど,実はその「見てる」というときに関係している,網膜が受け取ってる光線というのは,まさにその穴を通った光も含まれてるのだろうか,と,デカルト的疑問が脳裏に浮かぶ。
気になってWebで調べてみた。驚くほどの情報量。とても勉強になった。けど,ますます心配にもなった。角膜というのは「角膜上皮細胞→ボーマン膜→角膜実質→デスメ層→角膜内皮細胞」という5〜7層の構造となっていて,このうち再生能力があるのは角膜上皮細胞のみということらしい。いわゆる近視のレーザー手術は角膜実質を切除する手術で,その部分は再生しないという。
果たして,ぼくの目にあいた傷は,角膜上皮だけなのか,ボーマン膜を破ってるのか,それとも実は角膜実質までえぐってしまってるのか。痛みがないので,まさか傷が角膜内皮に届いてるなんてことはありえないのだろうけど,とても気になる。
1年間,コンタクトをして生活したせいで,一気に視力が落ちてしまったけど,コンタクトって,ちょっと考えものって気がしてきた。渡米前は裸眼で運転免許も合格だったのに,いつのまにか,視力は0.2とか0.1に近いレベル。これからは毎日,1日中ディスプレイを見るような仕事をするのだから,やっぱり眼鏡のほうがいいのかもしれない。
2001/10/21(Sun)
英語は聞こえて来ないけど,その気になれば
日本に戻って,英語が聞こえて来ない,目に入って来ないことに,やや焦りを感じてた。インターネットで日々ニュースくらいは読んでるとは言え,やっぱり全然少ない。アメリカにいるときには消化速度がまったく追い付かなくて,あっぷあっぷしてたけど,いきなり逆転。
CATVが入ってCNNやFOXが見られるようになれば,だいぶ違うだろうと思いつつ,日々なんとなく英語を聞かない不安が募る。アメリカから持ち帰ったTIMEを隅々まで読んでしまった。そして,TIME ASIAをWebで54週分契約。
中途半端な英語しか聞こえて来ないInterFMをやめて,AFN(旧FEN)にチューン。ややロックやカントリーミュージックな時間が多いものの,ちゃんと英語が聞こえて来る。なんだ,NPR?
新宿の紀伊国屋の洋書コーナーへ行ってみると,すごい充実ぶり。サンフランシスコのダウンタウンにある一番大きな本屋の3分の1くらいの規模があるかも。結構な値段ではあるものの,並のアメリカの本屋で手に入る本は大抵並んでる。新刊や売れ筋はもちろん,定番もあるし,雑誌も豊富。さらに,グロッサリーストアで売ってるタブロイド版のゴシップ新聞なんかも,ちゃんと2,3紙あって驚き。せいぜい$2〜$3の週刊紙が1000円で売られてるってのが,それもまた驚きだけど,これはすごいことだ。今まで日本にいたときには気づかなかったけど,この英語素材の選択肢の幅って,かなりのモノ。
The Los Angels TimesやThe Washington Post,さらにイギリスのThe Independentなんかの新聞と記事提携しているというThe Daily Yomiuriの購読を開始。さっそく届いた日曜版には,イギリスの新聞記事が。これは新鮮! ちょっとヨーロッパの匂い。
日本に戻って,日本の本や雑誌をあれこれ読みたい気分になったりするけど,やっぱり当面は英語に囲まれる生活を続けようと思う。その気でやれば,やっぱり日本にいたって英語に囲まれる環境ってかなり作れるんだなって思った。次は,Audible.comのオーディオコンテンツかな。
2001/10/23(Tue)
サクサクIC辞書
S氏について行くかたちでS社の取材。なんだか良く分からないキーワードがチラホラ頭上を飛び回る。未知語といっても,もうPC業界に長くいるので,文脈からだいたい内容が想像できる。なるほど,最近はそういうことになってるのか,と。しっかり勉強してから取材に行くというのがタテマエのところ,取材中に勉強なぞしてみたり。
S氏がテクニカルでコアな部分に突入しつつある横から,やや無難な質問を投げてみる。「えーと,ですから昨日発表させていただいたとおりですね……」。はっ,ヤバい。いくらなんでも勉強不足まるだしか。
やっぱり人に話を聞くのは楽しいものだ。技術者の話は面白い。素人考えのアイデアをぶつけてみると,案外向こうも乗って来たりして。
またしてもIC辞書を購入。外で紙媒体のモノを読むため。新聞,雑誌,ペーパーバックを読むときには,小さくてキビキビ動作のモノがいい。すでに持ってるSEIKOのSR8000は唯一英英辞典が入ってる点とか,捨てがたいところもあるけど,遅いしデカイ。同じくSEIKOのSR-700Sは動作は軽快だけど,形状がイマヒトツ。持ちづらく,机の上以外で開くことが,あまり考えられてない。
今日買ったのはSONYのIC2050という機種。IC辞書としては,やや高めの2万6000円。これで所有するIC辞書が3つになった。腰のPalmに入ってる辞書も合わせると4つか。なくした辞書も含めると,すでにIC辞書に10万円もつぎこんでることになる。
高いだけあって,これがすごい。まず,CPUが16ビットになったとかでキビキビと動く。辞書の内容を圧縮してるからってのもあるけど,実はCeleron-300MHzのノートPCで引く辞書よりも軽快。インクリメンタルサーチなんかもサクサク。英語学習者の間で絶大な人気をほこるSEIKOのSR8000は内容はいいんだけど,動作が遅い。そしてデカイ。IC2050は名刺サイズ。一般的なIC辞書の半分くらい。なのに,ちゃんとまともな辞書・辞典が入ってる。広辞苑と研究社の英和・和英ばかりでなく,なんと平凡社の百科辞典マイペディア! これはすごい。ポケットに百科辞典が入るなんて! 世界大百科がポケットに入る日も近いのか?
メモリが安くなったから,こんなことができるんだろうなぁ。多少圧縮したとしても,広辞苑って10MBくらいあるし,英和や和英もそれぞれ10MB,マイペディアは20MB程度はメモリを食うはず。メモリ容量だけから言えば,ちょっと無理すりゃ世界大百科も入るって感じ。
しかし,研究社の英和・和英って,媒体や機種を変えながら,一体何度購入したことになるんだろう。コンテンツ代がどのくらいなのか知りたい。
2001/10/26(Fri)
まずいカレー
来月号のための下取材。赤坂。上司のつながりというか,ツテでたどった人たち。なぜか知らない会社の広報の人が,「あれっ,お久しぶりです」なんて人だったり。うちの会社から外に出る人って,たくさんいるんだなぁ。
赤坂のモティでキーママタール。これがびっくりするほどまずい。なんで? 悲しい。
20時。編集部に戻ったら猛烈に眠い。応接スペースの奥で30分ほど眠る。妙に元気になって,24時まで仕事。
「あれ,帰んないの?」。隣の編集部の先輩に誘われて,ビールを飲みに。気力的にもペース的にも,あまりに快調に仕事に集中してたので,ちょっと中断したくない感じだったけど,考えてみたら金曜日だし。編集部もいまいちシンとしてるし。
すっかり夜型生活。2時ごろまでビールを飲む。
2001/10/27(Sat)
量子力学供養
ふと目についた足元の本が不要っぽいので,次の資源ゴミの日に捨てようと思ったら,本棚に目がとまった。名残惜しそうに本棚に並んでたメシアの量子力学の本を,突然捨てたくなった。初学者にも,量子力学の歴史的背景から学べる名著というので,大学生当時のぼくとしては大枚を投じて買い求めた本。黄色い無地のカバーに書かれた地味な「量子力学」の文字。ずっしりと重たい3部の大著。買ってきてすぐ,はじめたばかりの一人暮らしの部屋で読みはじめて,なんだか妙に嬉しくなった記憶がある。もう9年くらい前。
物理学科と言いながら,かなりふざけた学生だったので,今でも量子力学の教科書を見て真っ先に思いだすのは,フォアローゼスの甘い香り。バーボンと量子力学で過ごす日々。若造だったぼくは,何だか絵的にソレが格好良さそうに思えてた。
でも,実際にのめり込んだのは,バーボンのほうばかりで,実は3冊中,読んだのは1冊目の半分くらいまで。本は割とキレ〜な状態。しかも読んだのは大学を出てから。というか,すごく最近。
部屋の掃除がいつまでもカタが付かないのは,きっと己のだらしなさのせいとは分かりつつ,今日突然,それを大学時代に買いもとめた教科書関連のせいにしたくなった。本棚に入り切らず床に溢れだしてる本たちは,きまぐれにしか開かれることのないそういう教科書たちのせいで,不必要に床に放置されていて,持ち主に踏みつけられている。
もう教科書類は全部捨てよう。
いつか少しずつでもいいから趣味的に量子力学の本くらいは1,2年かけて読みとおそうと思って本棚に置いてあったけど,たぶん読まない。読みっこない。読めっこない。それを初めて認める気になった。
捨てるくらいなら近所のブックオフへ,と一瞬思ったけど,ネットで「神保町,理工学書」を検索。理工学書で知られる明倫館書店かなと思いつつ。で,さっそく電話。「大学時代の教科書をですね」「教科書といっても,特殊なものはちょっと……」「いや,熱力学とか解析学とか,割とふつうのですね」「高木さんの解析ですか?」。
高木貞次の解析学の本と言えば,たとえ遊んでばかりで学校に来ない学生であっても,理工系なら誰もがその名を知ってるという本。
「いや,高木先生のじゃなくて,東京大学出版の解析学とか,あの,メシアの量子力学とか,原島鮮の熱力とか。後,並木先生の解析力学とか。ブレジスの関数解析とか……」「解析学は上下ともありますか?」「ええ,あります」「状態にもよりますけど,その辺のものでしたら買わせていただけると思いますよ」。話が通じる,さすがに詳しい。
大きなバッグ一杯に分厚い本を突っ込んで,神保町へバイクを走らせる。神保町は,なんだか古本市みたいなことをやっていたらしく人がたくさん。
はちきれそうなバッグから,20冊ほど本を出す。明倫館書店のおやじさんは,パラッパラッと1冊あたり5秒ほどずつ眺める。さりげなく混ぜておいたホーキングの本をどう見るかなと思いつつ,ちょっとドキドキ。おやじさんは,目も上げずにさらっと言った。「1万2000円ですね。それでいいなら,引き取りますが」。せいぜい今夜のカレー代,2〜3000円になればいいと思っていたので,かなり驚き。もともと1冊あたり2000〜4000円と単価の高い専門性の高い本とは言え,正しい場所へ来れば,本って,こんなに高く買い取ってもらえるんだと感心。ブックオフだったら,たぶん合計数百円だったに違いない。いや,下手したらゼロ円ということだってありえるかも。
帰りのバイクは重たい荷物がなくなったから心なしか軽い。夕日に赤く染まる九段下の登り坂も,軽やかに登って行く。心も軽い。本棚から抜き出すときに,一応それぞれの本をパラパラ繰って,数式を眺めたものだから,ちょっと気分が学生時代に戻っていたのかもしれない。なんだか学生のようなノホホンとした気分。バーボンばかり飲んで落ちこぼれてゆくことさえ気にもしなかった大学生時代。
ちょっと複雑な心境。今日は,ぼくの量子力学供養の日。ぼくの本棚に10年近くにわたって鎮座してたけど,結局成仏できなかったその教科書。誰か,若い人に勉強してほしい。ぼくとしては,本棚の神聖にして不可侵なゴミが1万円に化けたということよりも,「誰かの手にわたって,きっとその人はバーボンより量子力学にハマるに違いない」と思い描くことができるのが,なんとなく心の救い。
でも,実際には,そうじゃない可能性のほうが高い。
「お持ち頂いた本の,どれががいくらというわけじゃないんです。正直,私らが欲しいという種類の本じゃないんです。メシアの量子力学なんかは回転も速いし,定番だけれども,東大出版の解析学なんかは後から後から出て来ますしね。それに前ほど解析学の本が売れないんですよ。昔は4月になると学生がみんな買いに来たんだけど,いまは学生さんたちは生協に並んで買うんですね」「へぇ,お金持ちになったんでしょうかね」「そうかもしれませんね,ははは」「あるいは,そもそも教科書を買わないとか」「それも大きいですよ,実際(笑)」。
仕事とバーボンもいいかと思って,久しぶりにフォアローゼスを買ってウチに戻る。そしてやっぱりバーボンだけ……。ぼくって10年前と変わってないんだなぁ。
勢いついでで,かなりどうでもいい本を本棚から20冊ほど抜きだしてブックオフへ持って行く。620円。やっぱり,そんなもんか。
2001/10/28(Sun)
去勢される夢
去勢されてしまう夢を見た。誰かにされたというより,ただそういう状態になったという感じ。望んでそうなったわけでもないけど,まあ自分ではまんざらでもないかと思ってたりする。すごくリアル。ホントにリアル。ちんちんがなくなる感覚が実に良く分かった。見下ろせば,股にぽっかり空いた穴。シーツに血が付いてる。ちょっと切口がヒリヒリとしてるけど,涼しい。おっ立てようとしても,どうも何かが違う。
切り取られたちんちんは,そばに横たわってる。下着のディスプレイに使われる腰のあたりだけのマネキンみたいに,なぜかちんちんは単体ではなく腰全体をともなっている。そして,ちんちん自体は竹を割ったように,まっぷたつ。断面が見えてる。海棉体はやや黄色がかかった白。赤い血管が浮かんでて,妙になまなましい。だらりんと首を垂れている。
触ってもいないのに,暖かいことをぼくは知ってる。「いつでもくっつければ元通り」と思っている。それで,2日ほど放っておいてしまった。気づくと,ちんちんは冷めきってしまっていて,実はもう2度とくっつかないのだと悟る。ショック。
セックスポリティクスって面倒。いっそ男をやめたらどうなるんだろう,そんなことを最近思ってたから見た夢という気もする。でも実は,いま読んでる小説に,次々に殺される男たちが,ちんちんを切り落とされた状態で発見されるというシーンが出てくるから見た夢なのかもしれない。
午後一番でTOEICのテスト。約5カ月ぶりのTOEIC。鉛筆を忘れたことにバスに乗ってすぐに気づいた。たまたま前に座った女の子が,カバンからTOEICの受験表を取り出して会場地図を確認しはじめたので,声をかけて鉛筆を貸してもらう。そして,バスを降りてから,2人とも道に迷う……。迷ってる間に興味がわいて,あれこれ聞いてみる。「TOEICは何度目ですか?」とか。勤続6年の銀行員。仕事をやめて語学留学を考えてるなんていうから,思わずあれこれ話す。肝心の試験はウーム。どうかしら。
仕事せねばと思って,会社のある初台を目指す。ところがどうも電車を乗り間違えたらしく新宿へ。ぷらりと寄ったヨドバシカメラで冷蔵庫とコーヒーメーカーを購入。わーい。やっとおいしいコーヒーがたっぷり飲める。やっとコンビニに行かずにビールが飲める。やっとベーコンの買い置きができる。やっと1リットルパックの牛乳が買える。
帰宅してコーヒーをがぶがぶ飲む。夜半から明け方近くまで仕事。ざっくり仕上げて上司にメール。
2001/10/31(Wed)
受けれない健康診断
数日ぶりに,Palmのシンクロをして,ノートPCで登録した予定を流し込んでみてびっくり。明日は健康診断だった。あちゃー,今日は朝5時帰宅だよ。午前中の検診なんて,できればパスしたい。ていうか,午後イチでお台場で取材あるから受けれないじゃん。
もう5年くらい健康診断を受けてなくて,それというのも毎年会社がやってる健康診断が,毎年ほぼ同じ日程だからという気がする。11月の1日〜5日とか。だいたい締め切りで首がしまってて,首が回ってない状態が続いてる日々。
しかし,今月は比較的楽というか。「いったい,1年も休んでしまった後に,元の生活,仕事に戻れるのだろうか」と,ちょっと不安に思っていたけど,どうもゼンゼン大丈夫そう。
そして,なんだかちょっと仕事が楽しい。
NISHIMURA Ken <nis@bigfoot.com>