the other side of my days
ご意見,ご感想,ごいちゃもんなどございましたら
NISHIMURA Ken <nis@bigfoot.com>まで。


2000/08/01(Tue) イルカのごとく泳ぐ(イメージ)
2000/08/02(Wed) 田口ランディねぇ
2000/08/03(Thu) みずからバイク便
2000/08/04(Fri) プール2日目
2000/08/05(Sat) 祭だ,生ビールだ
2000/08/07(Mon) それでもメールは来る
2000/08/08(Tue) Webで本を買うということ
2000/08/09(Wed) ディズニーランド
2000/08/10(Thu) スカイダイビングを体験してみることに
2000/08/11(Fri) 東京ハンバーグステーキ
2000/08/12(Sat) Four Roses
2000/08/13(Sun) イルカの謎!
2000/08/14(Mon) 10年ぶりのアイツ
2000/08/15(Tue) 1人でやる仕事は1人のほうがいい
2000/08/16(Wed) ダールカレー
2000/08/17(Thu) 休みぼけ
2000/08/18(Fri) 20代でやっておくべきこと
2000/08/19(Sat) 大花火大会
2000/08/20(Sun) はじめてのスカイダイビング!
2000/08/21(Mon) 久々の日本酒
2000/08/22(Tue) トイレの個室にボクの写真が!
2000/08/23(Wed) 一歩,イルカに近付く
2000/08/24(Thu) テレビとロケット?
2000/08/25(Fri) 牛丼2杯分のビールのカロリー
2000/08/26(Sat) ゆく夏
2000/08/27(Sun) why? gimme a reason.
2000/08/28(Mon) 今日も中華
2000/08/29(Tue) 中身を見てから盗れ
2000/08/30(Wed) さるさるさる
2000/08/31(Thu) 月末,ゆく夏


2000/08/01(Tue)

イルカのごとく泳ぐ(イメージ)

午後一番で池袋へ。いつも南下する中野通りを北上する。今日もめちゃくちゃ暑い。渋滞する車の間を一生懸命すり抜ける。止まったら最後,アスファルトの照り返しとバイクのエンジンから昇る熱気で脳味噌が融け出しそうだ。
5月に違反したときの反則金を,まだ払っていなかった。3度もらった督促状は,いつも気づくと支払い期限が過ぎていた。「いい加減払え,払わなかったら所轄の検察に送致(*1)するから,そのつもりで」と最後通達が来たのが7月末。最悪のタイミングで来やがったと思ったけど,幸い仕事はとっとと片付いて,今日は最終チェックを残すのみ。送致ってのがいまいち何のことか良くわからんけど,なんとなくイヤな感じなので,行っておくことに。要は「あんたが望むなら裁判やりなはれ」ってことだよね。ていうか,もともと道交法違反のときに銀行や郵便局に払ってるのは,あくまで事務処理をスムーズにするための略式の合意であって,裁判するのが本来の姿ってことなんだよね。ね,教えてエラい人!
(*1)[法]一件書類・証拠物または被疑者の身柄などを,司法警察員から検察官に,あるいは一つの検察庁から他の検察庁または家庭裁判所などへ送ること。
池袋警察の横にある,通告センターなる場所に入ると,いかにも金払いの悪そうな,ちょっと人相に癖のある奴らが狭い待合室に淀んでいた。って,ぼくも人相悪いのかしら。
紙の書類を手渡して,30分。いらいら。どうもぼくだけ神奈川県での違反だからか処理に時間がかかっている。まさか神奈川県警とやりとりしてるの? かつて横浜の実家から持ってきた自転車の車体登録番号を照合するのに,おまわりさん電話してたもんなぁ。やりかねんよなぁ。
道交法違反だし,支払い義務を無視しましたよ,ええ。でも,そういう,こっち側の負い目と,いま現在待たされているという事務処理上の遅滞は,別個のことだよな,ヒトコト,「マダなのですか?」ぐらい言っても,身勝手野郎じゃないよなと頭では考えるけど,さすがに何も言えずに黙って待つ。隣の赤ちゃんが可愛いので,親が見てないスキにほっぺたをつねってみる。や,やわらかい。
いったい何をそんなにちんたらやってんだっていうほど,時間がかかって,やっと紙ペラ1枚を手渡される。見ると,生年月日が間違ってる。面倒くさがりのぼくは,黙っておこうかと思ったけど,後で余計面倒なことになるのも面倒なので,面倒ではあったけど,「あの,これちがってますけど,まあ適当でいいですよね」と面倒くさそうに言ってみた。今にも横線を引いて,書き直そうとするぼくの手から紙を奪い,その制服を着たヒト(推定:54歳,ウダツ上がらなくても楽しげ系。ぼくはそゆ人が好き)は,老眼鏡をはずして言ったもんだ。「あ,ほんと〜,ありゃりゃ。じゃあ,いま新しいの書きますね」。えっ……。1個数字間違えてるだけじゃ……。バックスペースキー1個の話じゃん。ねぇ。
なんつーか。ひょいとのぞき込んだ事務処理スペースには,整然と書類の山が築かれてて,パソコン1つないキレイな机。ネットワークもないんだろうな,当り前か。どうやってコンピュータもネットワークもなくて,データベースにアクセスしてるんだろうか。まったくもって奇妙な世界だ。非効率のキワミ。日本のケーサツって大丈夫なのかしら。
と,そんな文句の1つでも言ってみたり,不必要に支払いを滞納したりと,そういう無意味と分かりつつ無意識的にやってしまう小市民的な……,いやいや市民としての持つべき,健全な官憲に対する嫌悪感はだね,やっぱりあってもいいよね。市民として持つべきなのは,滞りなく払うベキものを払うという遵法精神かもしれないけど,まあ寝言は寝て言え,だよね。んなの。ふん。
でも真夜中の誰も通りっこない横断歩道でも,信号が赤かったら,ぼくはちゃんと止まってるもんね。遵法精神はあるのだ。なんだ。つーことは単に金払いが悪いだけか,ぼくは。最悪じゃん。

池袋から新宿へ向かう途中,懐かしの大久保キャンパス隣にある,新宿スポーツセンターに立ち寄る。その場で,キャップとゴーグルを買って,いざ室内プールへ。今日はこれだけが楽しみで,わざわざクソ暑いなか,バイクに乗ってでかけたようなもの。
今日のところは1回ぐらい心臓が止まってもいいから,ヒィヤリする水に一気に飛び込んでやろうと意気込む。初めてのエッチにのぞむ男の子みたいに,あっと言う間に着ているものを脱ぎ捨てて,すっぽんぽんになる(まじまじと見るなよ,コゾウ達)。1秒でも早く水に入りたかったので,ひざの高さまでしか水着を履かないまま,よろよろとプールサイドに飛び出した。誰も泳いでいない。1時間に1度の休憩タイムのようだった。はぁ,と。
のんびり泳ぎに来ましたよという風を装って,ストレッチ体操なんかを始めつつ,周囲を観察すると,なんか意外に若い女の子が多い。むはー。区民プールってのがいまいち冴えないけど,プールサイドの出会いなんてあったりしてなぁとかオヤジ思考。あ,ちなみに新宿スポーツセンターのプールは2時間で400円。月に数回しか泳がないのなら,スポーツクラブより経済的でお勧め。たとえ毎日欠かさず行っても,1カ月1万円強。ジムもあって,そっちは3時間400円。ぼくはベンチプレスとか,自転車こぐのとか,興味ないけど。あれ,実験室のマウスみたいじゃん。ぼくはイルカなのだ(イメージ)。
昨日の日記に書いたけど,イメージはイルカです,イルカ。すっかりイルカ気分で泳ぎだしたわけだ。でも,死ぬかと思った。25m泳ぐたびにぜいぜい言ってて,30分かかってやっと500m。ショックなりー。ピップエレキバンを張ったまま泳いでたオヤジにガスガス抜かれたナリー。ぼくはイルカじゃなかったのダァーァー。キュゥーウゥーン,キュューン。
ま,学生時代のように,また少しずつ時間を作って泳ごうかと。継続は力なり,が,今期の私のテーマです。

それより,びっくりしたのが戸山公園。新宿スポーツセンターのまわりは,都内ではわりと広めの緑ゆたかな公園で,学生時代は終電がなくなって野宿もしたし,花見もやったし,レーザー銃を持って銃撃線もやったりした,想い出の場所なんだけど,そこがなんと,テントでびっしり。青いビニールシートを木にひっかけただけのものから,どこからそんな立派なものを拾ってくるんだってほどデッカイ本物のテントまで,全部,ホームレス。いいのかね,こんなことで。新宿区。
よせばいいのに一生懸命クロールしてしまったので,肩がガクガク。疲れ切ったヒラメのようにしばらくベンチでノビていた。ジリジリ。ジリジリ。さすがに泳いだ直後は灼けるような日射しも気持ちいい。
バイクにまたがると,鍵を回す手がちょっとプルプルふるえてた。腕がだるいし,下手したら事故ったりしてと思ってたら,ホントに事故った。まあ事故といっても軽い接触事故で,ミラーとミラーがぶつかっただけなんだけど。バイク乗りには茶飯事ですな。半年に1回ぐらい,忘れたころにかすってる気がする。でも,いつも忘れたころにぶつかるもんだから,やっぱり一瞬,あっ,と思う。いきなりガキッという音がするもんだから。で,あっ,と思って振り返ると,すごい形相でおじさんが睨んでた。慌ててバックして行って謝ると(バックって足で地面を蹴るんだけど),そのおじさんは睨んでたんじゃなくて,単にビックリしたって顔を作ってただけみたい。「すいません大丈夫ですか」と,声にだしてもいいはずなのに,ウィンドウ越しなので,なぜか口だけパクパクさせるぼく。向こうは向こうで,「わっはっは,にぃちゃんびっくりしたよ。もぅ気を付けなよ!」と,なぜか声にせずゼスチャアだけしながらミラーを指さした。ぶつかったのに,そんなにニコニコすることもないと思うんだけど。まあ,ちぇって言われるよりいいか。

15時ごろ出社するもゲラの出る気配なし。印刷所から出て来た色校正だけ見て,パソコンの前でほうける。ぼけ老人のように,ブラウザの画面をぼんやり眺める。ほげー。インターネットって,検索とクリックだけホントにいろいろ出て来るよね。bk1で本を買う。で,今日のイチオシURLは,http://www.alc.co.jp/gn/gnsoda11.html。小股の股って,どこの股って話。
夕方,早々と隣の編集部のAさんと中華を食いに行く。生ビールが死ぬほどうまい。やっぱりスポーツはいいよな,500mだけど。スブタも四川マーボーも,春巻きもうまいし,芝えびチャーハンもうまいうまいといってる間に,ふと見ると,お腹がはちきれていたんだけど,これでも一応ダイエット中。だって,1日1食だもん。
編集部に戻って待ってはみたけど,結局,ゲラは朝方になるというので,さっさと帰る。
今日の気になったヒトコト:「ウィンドウズ・サーフィン」「スクロールで泳ぐ」。完全に脳味噌がパソコンにおかされてますよ,それ。

2000/08/02(Wed)

田口ランディねぇ

やっと出て来たゲラに赤を入れつつ,次号の仕込み。しこしこ。

もうね,酷評していいですか。いちいち書くのも腹が立つほど,くだらなかった。田口ランディの『コンセント』。話題になってたから最後まで読んだけど,ただただ時間を返せって感じ。こんなのアリ? なんでこんな本がおもしろいのかな? 人間洞察は浅いし,文体は稚拙だし,ただのエログロおばさんのテスサビじゃん。素人にばれる程度の付け焼き刃の心理学の知識を詰め込むなよって。パソコン通信ホストの掲示板で発表していたとしたら,あるいは才能あるおばさんだと思って眺めてたかもしれないけど,その程度。活字の世界ってか,小説の世界ってそんなチョロイもんか? ふざけるなって感じ。YOUNG JUMPのオカルト・マンガみたい。エンタテイメントとしては三流,文学としては四流だと思う。内容空虚な,ただ最後のくーだらないオチのためだけに書かれた本じゃないのかって思う。一番最後から読めばっていうか,最後の1行を読めば,この本は読まなくていいと思う。取り上げた「ひきこもり」というテーマの現代性という意味では,さすが気鋭のコラムニストと思わなくもないけど(だから前半はね,ちょっと期待した),とにかくつまんない本。文章で人をエロな気分にさせるのって一番簡単で,涙,笑い,恐怖,感動の順にむずかしいというけど,この本って,エロ未満といっていい。読むんじゃなかった。こうやってまた,ぼくはイマドキっぽいフィクションに嫌悪を催すようになる。せめて東野圭吾とか高村薫とかを読んでいたら,こんなことにならなかったのだろうなぁと思うんだけど。でしょ? 東野ファンのみなさま?

2000/08/03(Thu)

みずからバイク便

待てど暮らせど出て来ないゲラ待ち状態で,もうすっかりぼく的には仕事は終わった気でいたのに,なんとまだCD-ROMは終わっていなかった。某大物ソフトの収録を睨んでCD-ROMの内容(コンテンツ)で,まだすったもんだをやっている編集部。本当にぎりぎりのタイミングまで引っ張り,表紙も2パターン用意している(間に合った場合と,間に合わなかった場合と)。いよいよ,10回目ぐらいの最終締め切りという時点で,いよいよだめかもしれないムードがただよう。これが入るかどうかで売行きが数万部変わるかもという大物ソフト(おおげさ)。副編が肩を落すので,「さっき,電話があって,もう1つの大物(かもしれない)ソフトのβが来週でるって話ですけど,間に合いますかね」と,冗談で言ったら,「即! 即連絡だよ!! あと数時間しか猶予はない!」と,編集長が叫ぶ。
まさか間に合うタイミングとも思わないし,間に合わせることなんてしないと思っていたから「次号収録ということでよろしくお願いしますぅ〜」と,某広告代理店の担当者には挨拶して電話を切ったばかりだった。β版の登場も,来週以降だって話だし。でも,もしかしたら,すでにデータの準備ができてる可能性も否定できない。聞いてみる価値はある。
が,こんなときに限って,ぼくって担当の人の電話番号聞いてないじゃん。来週メールくれるっていうから,あえて聞くこともないかと思ったわけ。あわてて,名刺をひっくりかえして適当に電話してみる。すでに代表番号はテープが回っているし,知ってる人の直通番号もテープ。留守電入れても,ラチがあかないので,いきなりオフィスを襲撃することにした。その代理店は,編集部のある新宿からバイクなら15分ぐらいいける四ツ谷だ。19時半。ふつうの会社なら,そろそろみんな帰る時間。
ちょっくら行ってきまーす,とヘルメットと名刺を持って,アポなし訪問。そもそもそんな時間に行っても誰もいない可能性もある。びゅんびゅん走りながら,これで事故ったら労災かなぁなどと考える。「こういうときって,事故るもんだから,くれぐれも気を付けて」と言った副編の声が耳に残る。
8階にあるオフィスにバタバタとなだれ込むと,すらっと背の高い,いやにリラックスした感じの女性が「うけたまわっていますか」と言うので,「はぁ」と気の抜けた返答をしたら,その人が担当者だった。かくかくしかじかでめちゃくちゃ急ぎで,なんとかならんもんかと,突然お邪魔したのでお茶は要りませんが,いけそうかどうか,即答くださいっ,データくださいっと,まくしたてる。「あー,それはぁ,無理ですね」。「は」。「ぜんぜん無理です」。「はぁ」。「来週の発表ですから,まだこちらではどうにもなりません」。「ほぅ」。「せっかくおこしいただいたのですが,すみませんです」。「ふぅ」。
さっき電話で「じゃ,来月」なんて話した奴が,急に目の前に現われて「ブツを寄こせ」なんて言ったら,ふつーは驚くよな。うん,担当の人は驚いてた。けど,瀬戸際というのはナリフリなんてかまっちゃいられないわけで。まあ,ダメだったのだけど。
すぐに編集部に「ボス! だ,だめです」と電話を入れる。「あそう,だめ。そう。じゃあ,マトンビリアニ2つ買って来てね。朝から何も食ってなくて死にそうなんだよ」と,切羽詰まったような詰まってないような編集長の声。四ツ谷まで来て,アジャンタに寄らずに帰るわけにいかないよなぁとは思っていたけど,バイクで出前を頼まれても……。というわけで,いつもなら10〜20個のカレーを買うところ,こっそり自分の分も入れて,3つのカレーを持ち帰る。

カレーを食い終わるころには,結局,無事大物ソフトは入りそうとわかった。ほっとしてゲラの最終チェックも終わったころ,今度は印刷所に表紙のデータをバイク便するようおおせつかる。ふつうのバイク便じゃ手配だなんだで時間がかかるので,君が行ったほうが速いと。おうよ。行きますよ,行きますともっ。持って行きましょう! バイクに乗るようになってから,何度自分の手で最終データを印刷所に運んだことか。
「これで死んだら,労災よろしく」と,編集部に言い残し,印刷所のある神楽坂へ猛スピードでバイクを走らせる。すでに23時。ふつうの会社だととんでもない残業だ。一刻も早く,このMO(なんです)を! はたして印刷所の,すでにひとけがなく,うすぐらい営業部には,ぐったりと疲れて椅子にのけぞる弊社担当者の姿があったのでした……。
てなわけで,1日に2回も仕事のバイク便を自らやってしまった。ぐぅぅ。

今日はじめて食べたもの:バイガイ(60点/100点満点)

2000/08/04(Fri)

プール2日目

すみません。寝ボウです。大寝ボウです。

昼過ぎに,プール。このあいだ,いきなり泳いで痛くなった肩は,だいぶマシになったので,今日もまたブンブン泳ぐ。やっぱり,ぼくはマゾっ気があるのかなぁと思いながら,一生懸命に身体をいじめる。もうダメだ,苦しくて死にそうだ……,でも,いっそもっと苦しんでやろう……と考えながら,どんどんターンしてしまう。といっても,40分で800m。夏休みの目標はコンスタントに1kmかな。
プール後,今日は腕がぷるぷるしない。ほどよい疲労感。あま〜い缶ジュースがうまい。ビールと食事が楽しみだと思いながら,夕方はのんびり本を読む。いい感じでお腹がすいてくる。

食事の誘いを立て続けに3件断られて,がっかり。泣きじゃくる。なんとなく1人で食うのもさびしいので,久しぶりに1歳児のいる友人宅を急襲することにした。いまから30分で行くよぉとか言って。
あいかわらず,ココちゃんは可愛い。1歳と2カ月。可愛いけど,驚いたことに,すでに赤ちゃんではなくなっていた。自己主張はしまくるし,歩き回るし,ちょっと人見知りもするようになっていた。不思議な生き物だと思った。納豆を,べちょべちょになりながら,おいしそうにほおばっていた。大人向けのカレーが辛くて泣いていた。
しきりに猫のシールを貼りたがるので,シールのはがし方を教えてあげる。ちゃんと見せてあげると観察するんだよね,子どもって。ちょっと台紙を折り曲げて,浮いたシールの端をつまむんだよと,何度も実演する。でも,赤ちゃんは赤ちゃんで,裏返ったシールの台紙から,裏側のシールを取ろうと,むきになったりする。まだ観察が足らんよ,キミと,表と裏の違いを教えてあげる。
カレーライスをお代わり。ポテトサラダもいっぱい。ごちそうさまでした。夫婦ゲンカと,母娘の愛情を観察。ふーん。

2000/08/05(Sat)

祭だ,生ビールだ

サシミとか焼き魚がうまくて,良く行く近所の居酒屋「かわちゃん」のおかあさんが,方南祭で人手がないというので,昼過ぎから手伝いに行く。おかあさんは,足が悪くて,1人じゃモノが持てないから,とくに男の手が必要という。
年に1度の祭。「方南演歌祭」ってのが,ちょっとナンだけど,なんか楽しそう。まだ方南町に来て5カ月だけど,なんか地元の交流っていいじゃんって思って。
ビールサーバのセッティングとか,枝豆,トウモロコシ,ピーナッツ,イカ焼き,鰻のキモなんかの準備とかしつつ,ビールを飲み始める。うーん,夏だね。駐車場が即席会場になるらしく,どんどん機材が運ばれ,人が増えて行く。
枝豆のパッキング。1パックいくらぐらいかね,と,適当な量をビニールパックにわけつつ常連たち。俺だったら,これは300円。いや,200円かな,とか好き勝ってなことを言う商売っけいのないヤカラにむかって,おかあさんがヒトコト。「原価の倍にするのよ」。おお,そうか人件費がタダ(ビールで買収された常連)でも,やっぱり原価計算はきっちりなのねと,感心。「でも,ビールが350円で枝豆が200円ってことは,セットなら500円。サービスセットと言って,それをメインに売りゃいーじゃん! メニューのトップ,トップ!! ががーんとデッカク目立つように書くっすよ。新500円玉は全部いただきっすよ」と提案。即採用。
男連中は,こういうとき,ほんとにダメなもんで,パックにわけた大量の枝豆たちを見つめて,「あっ,塩!」とか言ったりする。「順番に俺がパックあけるから,塩まいてくれ。流れ作業だ,流れ作業!」。こういうの,たまのことだから楽しいんだよね。ままごとみたいで。
やっぱり,おかあさんはずっと商売やってきただけあって,いろいろ細かな指示が的確。つまみや飲物の値段のディスプレイの仕方,商品の見せ方,店員の立つ場所。いちいちなるほどとか思ってしまう。で,客商売の経験がほとんどないぼくは,ちょっとドキドキしながら,ビールサーバで生ビール販売を担当。「いらっしゃいませー,生ビール,いかーっすかぁー」。「どぞーいらっしゃいまっせー」。
いつも生ビールは自分で入れてるから,結構泡の量の調整には慣れてるつもりだったのに,ビニールのコップにそそぐと,なぜか泡だらけ。半分くらい泡になったコップを,やばいなぁと思いつつ手渡した,1人目の客。まさに1人目。チョビひげ,ムキムキちんぴら系イログロ。「おい,兄ぃちゃん,これ半部泡じゃねーかよ,なんだよこれ」とゆわれる。どきん。やっぱし……。「やー,まだ今日は機械の調子が悪くて,すっみませーん。はい,ただいますぐにー」。ひぇぇー。
おかあさんの娘の友達連中(17歳)が来て手伝い。やっぱり若い女の子が「なまびーる!」と言ったほうが断然売れる。やー,若いっていいね。で,ぼくはどう見えるのかと思ったら,「23?」だっていやほんとマジですよ。まだ25で通るかね,と最近妙に年のことばかり気にしているぼくとしては,思いきりオジサンくさく言ってみるのだけど,「ぜんぜん,どーがんじゃん」とか言われて舞い上がる。ひとまわり違いのコ・ムスメたち。「でもヒゲが濃いかも」と,アゴをじょりじょりいじるんじゃない。同じイヌ年だよ。24歳は射程距離圏内らしいので,以後,24歳で通すことにしました。やー,ほんっと。年とったもんだ。

で,お祭り。典型的なおエラ方挨拶の連続。区議会議員だ区長だ,商店街の理事だの。信じがたい凡庸さ,冗長さ。でもね,杉並区長ね,歌うまい。びっくり。でも,あまりにばかばかしい挨拶が続くので,思わず「なぁまーびぃーーるっ,いかぁーっすかー」と声をはりあげる。まだちょっと恥ずかしい。
元巨人軍のヤナギダという人も,やたら歌がうまい。彼は近所に飲み屋をオープンしたらしい。演歌祭なのに,地元の学校のお子たちの踊りやら,区内のアマチュアバンドのジャジーな演奏やら,ふーてんのトラさんそっくりさんとか,よくわからない出し物が続く。なぜか沖縄民謡っぽい調べに乗って踊る子どもたち。片手で持てる太鼓のような打楽器。ビールサーバ越しに眺めてて,不思議に思う。なんというか,悪くないんだよね。思わず,マツリというもの,マツリの音楽というものの,文化人類学的側面について思いを馳せる(嘘)。地元の連帯ってなんだろう。踊ってるのは,八百屋のおやじや,肉屋のおやじ,そんなのもいる。みんな楽しそう。
そこそこ売れてるのか,ぜんぜんダメなのかの判断もできないほど,出演者は不明。演歌界のことはわからん。でも,着物姿の女性がたくさん目の前を行き来してて,ああ,やっぱりプロは違うなぁと思う。めちゃくちゃ愛想はいいし,キレイ。歌もやっぱり断然うまい。サービス精神が旺盛だよね。ちょっと年のいったように見える人がね(もしかして,下積みな人か,いつまでもダメ系な人なのかもしれないけど),なーんとなく乗り切らない会場の人たちを前に,1人でブンブン袖を振り回して踊れるのって,すごいことと思うんだな。これぞプロだよ。田口ランディに腹がたったのはね,このへんのことだと思うのだ。私小説なんだから,しょせん書き手のカタルシスでもいいんだけど,手放しでオナニーをして,それをそのまま世に問うなってこと。しかも「あとがき」に能書きを良くも垂れやがったなとね……。プロなら,オーディエンスにサービスしろよって。あ,話がそれた。

結局,祭は21時半に終わった。終わると同時にどしゃぶり。一気に片付け。思ったほど,イカの丸焼きが売れず,残念。
お疲れさまのビールを飲んだ後,なぜか17歳のコ・ムスメ(B)とビリーヤードに。ちょっと自信があったらしいのだけど,大人げなく,こっぱみじんに打ちくだいてやったのだ。ふふふ,むかし取ったキネヅカとはこのこと。

2000/08/07(Mon)

それでもメールは来る

「夏休み中とのことでメールにしました。N社の方より電話があり,所定用紙に記入の上,ファクスで本日中に返送願います,とのことです」。夏休み中の人間に対して「本日中にファクスせよ」の伝言を承るとは,うちの庶務も気がきくもんだ。
月曜日。やっぱり,ぽろぽろ仕事がらみのメールがやってきてどうにも夏休みなんて気分じゃない。さっさとどこかメールの届かない遠く,土星あたりまで行くべきだったと後悔しつつも,ちゃんちゃんと返信。結局,午後,プールに行く前には会社に立ち寄る。電話してファクスして……。

今日でプールは3日目。やっと1km泳ぐ。45分。泳いでるとき,苦しいのは苦しいけど,だいぶ楽になった気がする。たぶんそれは気のせい。そんなに急に身体が順応するわけがない。きっと,「苦しさ」に対する心構えのうち「ヨロコビ」の比率が高まったのだろう。
プールからあがって,今日は腕も身体もだるくないし,それほど消耗してないなぁと感じながらバイクにまたがろうとすると,ひざをバイクのお尻にぶつけてしまった。思ったより,足があがってないのは,やっぱりモモに乳酸菌がたまっているからかもしれない。ふぅ。
21時六本木の友達との待ち合わせまで,涼しげなカフェでも見つけて,早々と筆者から到着した原稿を読みつつ過ごそうと思っていたら,いきなり空にたち込める暗雲。天気予報を聞けば(ああ,そうなんですiモードでもモバイルでもなくて,03-177なんです),東京23区には大雨洪水警報と雷注意報。せっかくノートPCを持って出て来たのに……。結局,急いで帰宅することに。
ホラー映画のワンシーンのような,絵に描いたような真っ黒な雲が,夏の夕暮れの空の半分をうめていく。遠く轟く雷鳴。かすかに雲間が青白く光る。淀んだ生暖かい空気。家に帰りついてクーラーが効きはじめたころ,どしゃぶりの雨とひっきりなしの雷が始まった。

夜,なかなかやまない雨の音を聞いていたら電話が鳴る。コ・ムスメ(B)。ケータイの番号を聞いたつもりも教えたつもりもなかったので,つまりわざわざ人のケータイのリストからぼくの番号を教えてもらってかけてるってわけで,そのことがぼくに悟られることもコ・ムスメ(B)はわかってやっているわけで,とすると,「これはそういうことか」と,やや勘違い。高校生の誘いを「先約」として受け付けてしまう。ああ,いいのか,オレ。まあ,雨の中,わざわざ六本木まで出て行くのもおっくうになりはじめていたのでよしとする。外資系コンサル業という,頭はいいけど,もっともうさんくさそうな奴がはびこっていそうな業界に身を置くその友達は,「ミーティングが伸びた」と言ってため息をついていたので,なおさらOK。
ぼくの勘違いは大きくはずれてはいなかったし,コ・ムスメ(B)の態度はわかりやすく,かわいらしいものではあった。だけど,いくらなんでもそりゃまずいべ,と自分に言い聞かせて,のらりくらりと「無色な」お兄さんをとおす。ぼくがまだハタチそこそこなら後先考えずに(って,考えるほどのことはないんですが),やっちゃってた(あるいはその方向に向かって努力してた)と思うけど,あくまでのらりくらり。どんなに露骨なチャンスを作ってくれても,気づかないフリ。ノーと言い切るのはつまらないし,かといって転がりだしてもやっかいだから。いざ転がそうにも実は転がりづらかったり,転がしてみたら,止まんなくなったりとか,あるいは転がすこと自体が驚くほどつまらないことだったりとか,そういう事前事後の面倒が,あれこれ想像できる年齢になってしまったらしい。ありてーに言えば,背骨をぐらつかせるほどだった欲望の炎がひとまわり小さくなったということ。同じことをカッコつけていえば,欲望の炎のコントロールの仕方を身に付けたわけです。ぼくが蓋をあけようとしないかぎり,炎は燃え上がらない。あ,すみません。嘘つきました。
とか,もっともらしいコトを書いてみたけど,結局,単に好みじゃなかっただけということだったりして……。でも,個人差はあるのかもしれないけど,よほど天使のような17歳か,悪魔のような17歳でもないかぎり,今のぼくが17歳に心ひかれることってないような気がする。

2000/08/08(Tue)

Webで本を買うということ

夕方は今日もプール。30分程度で,軽く500mか800mぐらい泳ぐだけにしておこうと思ったのに,泳いでみれば結局1km。どうせなら700m,どうせなら800mとか。35分で1kmということはペースがだいぶ上がってる。
仕事中の同期のカワダマに電話して食事の誘い。今日も夕立ちが降りそうな気配はあったけど,湿った空気はそのまま夜に包まれた感じ。明治通りを南下して渋谷のモヤイへ向かう。夏でも夕方以降のバイクは風が気持ちいいもの。
カワダマも,ヨシローも,この日記を読んでいて,ぼくが昨日書いたコ・ムスメのことを知っているというのがなんとなく,妙な感じ。ああだこうだ突っ込まれながらも,あれこれ話す。人事のヨロシー君の話す新人研修話が新鮮。

bk1.co.jpで買った本が昨日届いた。これが失敗。Webで本を買うことに,あんまり抵抗がなくて,むしろどっちかいうと最近では本屋で買うより,Webで買うほうが多いぐらい。すでに紀伊国屋bookwebだけで,100冊ぐらいは買ってると思うけど,大きくハズしたなぁと思うことはなかったのに。
はじめて失敗したなぁと思ったのは『いま,もう1つの素粒子論入門』という本。これはパリティという物理雑誌の連載をまとめたもので,この雑誌はもともと物理関係の大学生や院生,研究者を対象にしたものだから,容赦なく数式が並び,それなりの知識を前提とするような本だった。きびしい。
場の理論,ゲージ理論,量子色力学,CPの破れ,といった,科学オタクなら誰でも知っているような言葉を,ちゃんと数式を使ってアタマから説明している入門書というわけで,思わず買ってしまった(クリックしてしまった)けど,世にあまたある科学啓蒙書の類とは違って,とてもさらさら読めるようなものじゃなかった。歴史的経緯を踏まえて,とても面白そうに書かれた本だけど……。夏休みだから頑張って読んでみるのもいいかと,一瞬だけ思う。

2000/08/09(Wed)

ディズニーランド

12時,某社での電話取材。N社の広報を担当している四ツ谷のB社まで直行。シリコンバレーにあるN社のマーケティング担当者は日本語が堪能で,電話越しのインタビューはすべて日本語。あれこれ新製品について聞く。聞きながら目の前に置かれた電話の表示する課金情報がやや気になる。
本当は1週間連続して休もうと思っていたのに,急な取材も入ったし,会議だ打ち合せだ,フロアの引越しに先立つ大掃除だってんで,出社。やっぱり来週休みにすればよかったと思いながら,お仕事お仕事。長けりゃいいってもんじゃないでしょうってほど,長大な企画書を書き,原稿にコメントを入れ,次号企画の調べモノをし,会議,掃除,特集打ち合せ,いくらかの連絡メール書きを終えたころには,なんだもう24時。
隣の編集部のU君とビールを飲みに出る。ゆるゆるとビールを飲みつつ……,あれ,なんの話してたっけなぁと思い出せないほど,あれこれ話す。気が付くとすっかりあたりは明るくなっていた。朝6時。飽きもせずに良くしゃべるよな,この2人,と編集部では思われてる組み合せに違いない。考えてみたらハタチのU君は,ぼくと10歳近く離れていて,どちらかといえばコ・ムスメ(B)に近い年齢なのに,コ・ムスメ(B)と3歳違いとはとても思えない。ぼくの精神年齢が低いのか,奴の精神年齢が高いのか,それともそんなことは別に大した問題じゃないのかわからなけど,話のネタはかなり共有している。妙に大人びてて偉そうなとこがあるけど,好きなんだよな。

仕事中,コ・ムスメ(B)からメールが入る。ディズニーランドに誘われた。花火もパレードもあんまり興味がないし,そもそも夏休み中のディズニーランドというのが,聞いただけでゾッとするので,「悪いけど」と返信。

2000/08/10(Thu)

スカイダイビングを体験してみることに

今日も夕方はプール。ムキになる気持ちを抑えて30分弱で750m。だいぶ身体が楽になってきた。イルカになる日も近い。

せっかくの夏休みなので,子どものころから自分はいずれやるだろうと思っていたスカイダイビングを,やってみることにした。以前,「スカイダイビング」で検索したときに良くできたページがあったことを覚えていたので,思い立ってから,実際に申し込みの電話をするまで,10分もかかっていない。
申し込んだのは,Free Flight Japanという栃木に拠点を置く,スカイダイビング・スクールの体験ジャンプというもので,インストラクターと亀の親子のように落ちて来るタンデムジャンプという奴。ヘリで高度4000mまであがって,そこから40〜50秒間のフリーフォール,その後はパラシュートを開いて,ゆっくり空の散歩ってなことらしい。料金は機材のレンタル,保険も含めて3万円。保険は1億まで出るらしい。そういえば,スカイダイビングをやると,ふつうの生命保険って入れてくれないっていうけど,あれは本当なのか。まあ関係ないけど。
わざわざ自分で申し込んで行くような人たちだから,高所恐怖症のような人はいないのだろうけど,体験ジャンプをやる人達のうち,だいたい8割ぐらいの人が,初めてのジャンプでビビるらしい。本人が「はい」と,飛ぶ意思表明をしない限り,インストラクターはヘリから飛び出さないらしいので,ドキドキしてなかなか飛び出せない人もたくさんいるんだろうと思う。
で,ぼくは残り2割の,たいして恐がらない人のうち,さらに一部(!?)の,イキイキとして「いきましょーっ!」というタイプの気がする。大人がビビる7mの飛び込み台でも,子どものころからガンガン飛んでたのだ。えへん。7mも4000mも変わらんだろう! なんて言ってて,実際にやってみたら,恐くてチビったりして。
1分足らずの体験のために3万円も出すかって言う人もいるかもしれないけど,時間じゃないよね。行ったことのない街に行ってみたいとか,自分の知らない世界を見てみたいという好奇心を満たすんだから,結果やコストがどうあれ,やってみたくなるのが人情でしょう。スカイダイビングって,周囲に1人も経験者がいないだけに,余計気になる。長時間の自由落下ってどんな感じがするのか。単なる想像と実際にやってみるのとでは,巨大な違いがあるに違いない。
体験ジャンプは週末の13日,日曜日。1人でバイクを飛ばして栃木まで行くのだ。そもそもね,スカイダイビングをやってるような奴らって,どんなのか見てみたいって,そういう好奇心もあるわけです。

2000/08/11(Fri)

東京ハンバーグステーキ

今日もプール。どうも1km泳いだ日というのは,睡眠が長くなる傾向があるので,あまり無理せずに,今日は700m。だいぶ泳ぎ方を思い出してきたらしく,ゆったりめのクロールが楽になってきた。
夜は麻布十番のウェンディーズで待ち合わせ。大学時代の友達に,籐椅子のお礼に晩ご飯をおごってもらう。ちょっといい雰囲気のレストランでゆっくりおしゃべりしつつディナー。カースルバーグ・ドラフト,おぼろ豆腐,カツオたたき,アスパラ,春雨スープ,ニラとねぎのチヂミ,東京ハンバーグステーキ,季節のシャーベット。おいしうございました。いやに話がはずんで,3時間も居座ってしまった。

『マリス博士の奇想天外な人生』(キャリー・マリス),『「捨てる!」技術』(辰巳渚),読了。捨てる〜のほうは,ベストセラーとかで手にしてみたけど,驚きも発見もこれといってなし。漫然とした印象があるのは,似たりよったりの主張を,繰り返しくどくど書いているからかと思う。スピード感がないと,この手の「術」本はダメじゃないのかしら。野口先生の「超整理術」系の本のほうが読んで得した気分になると思うし,歯切れの良さでは数段上。
マリス博士〜のほうは,前半はシンシで純朴,でも天才肌のマリスさんの,どこか子どもみたいな生き方をそのまま文章にしたような文体が爽やか。だけど後半は,ちょっとうらみつらみが多すぎていまいち。「科学」に寄生するアカデミズムを装った学校内の政治システム,マッチポンプ式に問題を作り上げる研究者,環境活動家。真の科学的態度からほど遠いエセ科学者なんかにへき易する機会が増えているのだろうけど,それにしても怒りをあらわにしすぎ。ユーモアで笑い飛ばすぐらいじゃないと,と思う。でも逆に,この真面目さ,子どもっぽさこそノーベル賞を受けるほどの天才の素質なのかもしれないと思う。納得できないことには,徹底的に「納得できん」と言う態度。
サーフィン好き,女好き,LSDもやれば,誰も合成したことのない化学物質を合成して自ら試すというめちゃくちゃな人だけど,一貫しているのは「自分の目で確かめる」「おもしろいからやる」という態度。ちょっと奇妙な気がしたのは,いわゆる占星術とか宇宙人の話を,わりとまじめに書いているあたり。ぼくにはとても科学者の言葉に思えなかった。
自伝的エッセイだから,語る順番は大切なのだろうけど,前半に爽やかなエッセイを配置しているのは,きっと編集者の配慮に違いない。ガールフレンドとのデートの最中にノーベル賞を受賞することになるPCR反応を思い付いたくだりとか,ノーベル賞の受賞を知らせる電話が鳴った朝も,やっぱりサーフィンにでかけていって,海からあがるなり記者たちに囲まれた,というくだりなんかは,読んでいてすがすがしい。毒グモにかまれて,医者と治療法に関して対立するあたり,いかにも生化学者っぽいし,全体に,化学者ならではの視点がおもしろい。
ビタミン剤をたらふく飲んでいるような人たちに聞かせてあげたい主張が気に入った。ぼくのちょっと急なダイエットを不健康だ,などと根拠もなく断罪する人にも。まあ,日本とアメリカでは,いわゆる健康ブームのレベルが違うかもしれないけど,それでも,あるある大事典とかミノモンタの言葉を鵜のみにしているような人は,考え直したほうがいいと思う。
いわく,人間が体内でビタミンを合成する能力を失ったのはまったくの突然変異の産物だけど,それは進化の必然でもあったという。ほとんどの生物は今でもビタミンを体内で合成できるのに人間だけができない。何百万年もの進化の過程でそうした能力を失った。それは不要だったというわけ。野菜や果物から十分に摂取できるので,わざわざ体内でつくり出すには及ばない。というよりも,生物は激しい進化の競争をしているわけで,無駄なことにコストをかけてはいられない。だから,ビタミンの合成能力を失った。人間はビタミン剤に頼る必要なんかないし,1日1食でビタミンが足りていないなんて証拠はどこにもない。ぼくはカップラーメンだけ食べて栄養失調で死んでしまった20年前の貧乏大学生じゃない。飽食の時代,国に生きて,日々違うものを口にしている現代人だ。どうやったら栄養のバランスを崩すなんていうことがありえるのか。摂取カロリーが少ないと,どうして不健康なのか。そんなもの,何の理由もない。むしろ,節食が長寿につながるという説もあるぐらいなのに。
「人はたくさん食べれば太り,食べなければやせる。ダイエットに関してこれ以上の真実はない」。そうそう。それ以外の「急激にやせるとリバウンドする」だの「代謝が下る」だの「身体が少ない摂取カロリーに慣れる」だの「栄養はきちんと取ったほうがいい」といったことは,ほとんど,たわごと。運動しないダイエットは身体に悪いなんてこともいうけど,運動も節制もしてなくて脂肪を蓄えたままの状態より,ちょっとは痩せたほうが成人病のリスクは減るに決まってる。そもそも醜く太って生きているぐらいなら,不健康に痩せて死んだ方がはるかにマシ(結局,これが本音だったりして……。これはこれで病的)。
あ,ずいぶん本から話がずれた。地球温暖化現象とかエイズについても,あれこれおもしろいことを書いているけど,もう眠いので感想はこれまで。

2000/08/12(Sat)

Four Roses

 け:「もしもし」
 ま:「はい」
 け:「あ……(声が高い。間違えたか),まさこちゃん?」
 ま:「うん」
 け:「(あれ?)……。けんです」
 ま:「あぁ,どうもっ」
 け:「……?」
 ま:「なに?」
 け:「あれ……,まさこちゃん?」
 ま:「うん,そだよ。どしたの?」
 け:「(あれれ?)……,うん,いや」
 ま:「なになに,どうしたの(笑)?」
 け:「いや,あの……,花火……」
 ま:「えっ,なに? 今日,誕生日だから電話くれたんじゃないの?」
 け:「えっ? 誕生日? (まさこちゃん33か? なんで今日まで言わないんだ)」
 ま:「そうだよ,今日。8月12日」
 け:「あっ! あーーーっ,あーーーっ。わかった! (まさこちゃん違い)」
 ま:「えーっ,なにー?」
 け:「だって,今まで1度だって君のことチャン付けで呼んだことないじゃん」
 ま:「いや,誕生日だから,また凝った演出かと思ってさ」
 け:「あ,そうそう。誕生日。そうそう,それで電話したんだけどね。うんうん」
 ま:「へぇー。まさこちゃんって誰,だれぇ〜っ? (笑)」
 
と,思いきり間違えたのは「昌子」と「正子」。ぼくのケータイには「まさこ」と「まさこちゃん」があって,後者の「まさこ」は間違ってもチャン付けで呼んだりしない(呼び捨てもあんまりしないけど)。番号リストをずらずらーっとスクロールさせて,ぱっとダイヤルしたのが間違い。というか,「まさこ」「まさこちゃん」で区別しているのが,そもそもの間違いのモト。
横浜に住んでいたころの,飲み友だちの昌子ちゃんを中心に,総勢40人ぐらいが集まって,八景島で恒例の花火大会。台風接近で延期の可能性を考えて,電話したというわけ。まさか間違えてるなんて思わずに。声がいつもとだいぶ違うなぁと思いながらも,ぼくが知ってる「まさこちゃん」は1人しかいないので,変だと思いつつも,電話の相手が「まさこ」と気づかなかった。とはいえ,「花火」のキーワードに反応しなかった時点で,ボケ気味のぼくも,さすがにいよいよ何かおかしいと思ったわけ。こういうとき男っていうのは,必要以上に慎重になる。あまり先走って,不用意なことを言うとやばそうだと,本能的に考える。別に,どっちのまさこちゃんに対しても,やましいところはないのだけど,なるべく手のうちを見せないうちに自分の位置を確認しようとして,かえって胡乱な受け答えになったりして。ともあれ,まあちゃん誕生日おめでとう(って見てないか)。
結局,花火は直前に延期決定。久しぶりの横浜。騒々しい中華街。軽やかなジャズライブ。冷たいスツール。フォア・ローゼスの甘い香り。グラスの中を転がる氷の音。メンソールのタバコの煙。なんだか全部が懐かしい。バーボンをロックで飲むのは,久しぶり。かつてただひたすら飲んでいたはずのフォア・ローゼスが新鮮。とてもおいしい。22歳のころにフラッシュバックする。

2000/08/13(Sun)

イルカの謎!

スカイダイビングの体験ジャンプは,台風の影響で,来週の20日(日)に延期。残念。
1年ほど前に買ったきり,数式の多さにひるんで読まずにいた,『イルカに学ぶ流体力学』(永井實),読了。「イルカは説明が不可能なほど速く泳ぐ」。イルカの驚異的な遊泳能力は現在の科学でも解明されていない謎らしい。流体力学と生物学の知見から予想されるより,はるかに速く泳ぐイルカ。といっても,イルカだけでなく,マグロやカツオも速いんだけど。
イルカは,体重あたり(筋肉重量あたり)の発生パワーと,推進力の間に,明らかな齟齬があって,グレイのパラドックスと呼ばれるこの矛盾にどうやって答えたらいいのか,それを研究しているリュウキュウ大学の先生の本。アリストテレスの物理観から説きおこして,ニュートンの粘性の定式化,オイラー,ダランベール,ベルヌーイの研究を経て,ナビエ・ストークスの方程式にたどり着くまでの流体力学の歴史を概観し,基礎理論を説明する。流体力学って,ものすごくむずかしいものかと思ったけど,理屈自体はすごくシンプルなのね。実際の現象の解析がむずかしく,むずかしすぎて,個別の現象を定式化できていないものが多いのと,まだよく調べられていない流体の振る舞いがたくさん存在するというだけで。
理想流体と境界層理論の概念のあたりを読んで,ゴルフボールにディンプルがあると,なぜ遠くまで飛ぶのかが,やっとわかった。境界表面に分子量10^5程度の直鎖状の高分子があると,抵抗が経るというトムズ効果や,サメ肌のような流線方向に沿って小さな尾根が並ぶ構造だと抵抗が経るというリブレット効果の話がおもしろい。アメリカズ・カップで,ヨットにリブレットをつけるのは今では禁止されてるという。ふむむ。
スクリューにかわる,効率の良い尾ヒレ型の推進装置とか,工学的な応用はいろいろ将来性があっておもしろいのだろうけど,どうもロボットフィッシュの話には,あまりコーフンできない。
人間の筋力って,人によっては瞬間的には1馬力(=約750W)出せるなんてのも知らなかった。自転車を漕ぎながらパソコンの電源を確保するのって,まんざらむずかしい話じゃないじゃん。200Wもあれば十分なんだから。

2000/08/14(Mon)

10年ぶりのアイツ

昼すぎ,一番暑い時間帯に今日もプールへ向かう。今日は都内はガラすき。お盆で,みんな休みなのだな。
室内とはいえ,外気温が高いと,プールの水がヒンヤリと気持ちいい。20分ほどで700m泳ぐ。

13時半ごろ出社すると,編集部員は誰もいない。いやに静かな編集部。こういう場合,たいていやる気がなくなるものだけど,1人でバリバリと仕事。さっさと原稿を出して,夜は赤坂へ。
高校時代の友達と10年ぶりに会って焼肉。卒業以来,風のたよりで結婚したこと,子どもができたことなんかは聞いていたけど,やっぱり会ってみると,いろいろ話すことはたくさんある。でも,昔話や噂話はほとんどなく,これからの話ばかりだったのが,ちょっと嬉しい。そう遠くない業界にいて,ちょっと似た志向を持つ仲間意識のほうが,かつて一緒にバンドをやっていたということなんかよりも大きい。
10カ月になるという娘の顔を見てみたかった。父親というものは,娘の写真ぐらい持ち歩いているものかと思ったけど。

筋骨リューリューとしたラガーマンだったアイツが,いまはMBA留学を目指して受験勉強の毎日という。いいよな,会社が予備校の費用も,各種試験の費用も,留学時の学費や生活費の負担もしてくれるんだもん。どうよ,この差。ぼくはちまちまと貯金してるんだぞ,これでも。MBAなんて,とてもじゃないけどカネがないよ。でも,語学はやるよ。なんたって,もうすぐ30歳だもん。いまやっとかないとね。

2000/08/15(Tue)

1人でやる仕事は1人のほうがいい

7時前に目が醒めてしまう。インターネットでニュースを見たり,メールの返事を書いたり。あれこれのサイトで情報を漁る。漁る,漁る。まだある種の情報は紙のほうが圧倒的に上だなぁと思う。
12時すぎ。今日もプール。だんだん距離も時間も減って,今日も20分で700m。やっぱり1日1kmは,いまの体力ではむずかしい。
14時すぎ出社。今日も静かな編集部。人もいないし,電話もならない。で,取材しなくても,1人でなんとでも書ける原稿を書く。いやぁ,来客だの打ち合せだのがないと,はかどるはかどる。あっというまに今日も1本片付ける。お盆の間に,あと2本,さっさとやっつけてしまおう。って,お盆っていつまでなのデスカ?
20時,大学のスキーサークル時代の友だちと新宿で待ち合わせ。20-14=6で,6時間しか仕事してないのか! という指摘は却下。原稿を出すのがぼくの仕事なのだ。書ければ帰る,これ理のトーゼン。すちゃらかサラリーマンぶりを発揮というわけです。にひひ。
小さなプロバイダに勤める,待ち合わせしたその友だちは,そこの社長とつき合ってるらしい。まもなく社長夫人やんか! と,冷やかす。でも,あれこれ悩ましい年ごろらしい。

夏は半キャップのヘルメットで走ってるのだけど,斜め30度ぐらいの右前を見て走ると,ちょうどオデコに風がすうすう入ってくるのを発見。涼しい。ぼくのオデコは左側が盛り上がってて,いつもヘルメットを脱ぐと「オデコどうしたの?」と人に聞かれるぐらい左側が赤くなってしまう。たぶん,その盛り上がりが作ってくれるすき間に風が入るのだろう。けど,やっぱり間抜けだよな。斜め見て走ってるのって。

2000/08/16(Wed)

ダールカレー

今日はプールは休み。早めに出社して,あれこれ仕事。そろそろ取材やら来客やらの予定がつまり始める。てっきり自分では暇だと思っているから,「いつでも,いいですよー」と安易に提案を受け入れていたら,いきなりダブルブッキング。ぐへ。何やってんだか。
中途半端に書いた原稿をほっぽらかして,夕方,いつもは忙しいボスと大ボスに声をかけ,すぐ外出することに。新宿でカレーを食いつつ,コーヒーを飲みつつ,あれこれ。雑誌全体のツクリのこと。雑誌という紙メディアのゆくえのこと。でも,ぼくが相談したかったのは,ぼく自身のゆくえのことだったのに。なんとなく話をしつつ,なんとなく合意を得たような得られなかったような。
ぼくってホントはダールカレー(豆)もパラクパニール(ホウレンソウとチーズ)もあんまり好きじゃないけど,大ボスのおごりなのでありがたく。大ボスから徴収しそこなっていた,前回のカレー分のことは忘れることに。って,お盆をはさんで覚えてるほうがしつこいという話もあるけど。そもそも大ボスには,何度カレーをごちそうになったかわからない。

2000/08/17(Thu)

休みぼけ

朝,ふとんの中で,ハイパーメディア(テキスト?)というアイデアの生みの親である,バネバー・ブッシュの記念碑的論文,「As we may think」を読む。とても1945年に書かれたとは思えない。おそろしいほどの慧眼。まだコンピュータがきわめて原始的で,ネットワークもないような時代に,ほぼ現在のWebのようなナニモノカを提案している。

「今日の取材,何時ごろ出ます?」と聞いて笑われた。休みぼけじゃないのか,と言われる。今日の夕方,取材だと思っていたのは,来週だった。しかも,取材先を勘違いしていた。ちゃんと,Palmに間違った情報が入っているのが謎。
なんとなく肩透かしをくらったような気分で,Webで情報あさり。あんなソフトをいれてみたり,こんなソフトの最新情報を見てみたり。そうこうしているうちに,とあるオバカ系サイトのパワー溢れる文章に圧倒される。作文としては荒削りでも,絶妙の間でオチがあるので,思わずディスプレイの前で肩をひくつかせながら笑う。さすがにヒトケのない会社でゲラゲラってわけにもいかないので,ちょっと抑えるのだけど,恥ずかしいほど肩がふるえてたと思う。コザカシクなるより,愛される馬鹿になるのが大切なのだよな,文章を書くというサービス業においては。

夜,都立大に住んでる同期の家におじゃま。サラダ,カツのチーズ挟みアゲ,ナスとベーコンのトマトソーススパゲティをごちそうになる。意外にうまい。茨城に引っ越してしまった,お久しぶりの後輩も遊びに来ていて,夜遅くまでテレビを見たり,ゲームしたり。やっぱりたまにはちゃんとテレビ見ないとダメだね。って,ぼく,本当に最近テレビ見ないんだよな。テレビって離れてみるとわかるけど,確かにテレビというメディアは「日本国民」という幻想をつくり出す有効な装置なんだと思う。あまり深い意味はないですが。
マリオテニス,マリオカート。いや,ゲームおもしろいよね。こういう即決,体感系,多人数系がいいな。
そういえば,今日,タイピング練習ソフトが売れまくってウハウハなH社の営業の人と話していて,ネットワーク対戦型のタイピング練習ソフトを作ってくれと,頼んだんだけど,コレ,ダメかな。MacromediaのDirectorなんかで,しょぼいビットマップを動かすんじゃなくて,ちゃんと3Dな感じで作り込めば,かなりウケると思うんだけど。なんたって実力勝負の世界。みんな燃えると思うぞー。世の中のタイピング速度自慢の多くは井の中のカワズ。ぼくもそうだけど。そいつらを全員ネット上に引っ張り出せば,すごいことが起こるような気がする。LAN上なら遅延も少ないし,オフィスで勝負しまくる人たちがたくさんいると思うんだけどなぁ。相手の打鍵が,ダイレクトに画面の揺れに直結してたりして,「打たれてる感じ」がわかると,燃えそう。まあ,ディアブロの比ではないだろうけど。ディアブロと比較するのが間違いか。

2000/08/18(Fri)

20代でやっておくべきこと

某PR会社の人が製品紹介に来社。製品そのものの話よりも,PR会社一般のよもやま話がおもしろい。
午後,社内取材。うちの会社って,なんのかんの言って,おもしろい人がいて,おもしろいことをやってるんだよな,と改めて思う。テレビとパソコンとインターネットとケータイとラジオと,そのへんが全部混ざってしまうようなちょっと将来のお話。たくさん勉強させてもらう。BSデジタル放送,CSデジタル放送の裏舞台。
夜,ボス,中ボス,大ボスと一緒に中野の台湾料理の店に。やっぱり雑誌作りの話。方針の話。偉そうなことを言えるような立場でもないし,何を言っても単に船頭が1人増えるだけという気もするので,だまって黙々と食す。なんかものすごくたくさん食べた気がする。

アラン・チューリングが1950年に書いた「コンピュータと知能」という論文を読む。人間の知能と機械の間に本質的な差異はないという信念に基づいて書かれたモノ。ゲイだったチューリングの偏執的なまでの機械(論理)への思いいれが伝わって来る。
チューリング・テストって,質問者1人に対してコンピュータ1台と思ったけど,質問される側というのは,人間1人とコンピュータというのが,もとの論文の設定だったのね。知らなかった。H先生が言っていた「知能の臨界」というのも,書かれてあって,なるほど,このことだったのかといまさらうなずく。

ひさしぶりに兄貴に電話して,9月の上旬にサーフィンに連れていってもらうことに。体力的にまったくダメっぽい予想はつくけど,なぜかやる前から,そこそこできそうな気がしてしまうのが,ぼくのオメデタイところ。ボードの上に立つだけでも,毎週末海に通って2カ月はかかるっていうけど,なんか数回のトライで立てる気がする。
気づいた人もいるかもしれませんが,スカイダイビングとサーフィンというのは,キアヌ・リーブスのアノ映画,『ハートブルー(POINT BREAK)』なのです。

2000/08/19(Sat)

大花火大会

ハマっ子なら誰でも,横浜の元町プールは水が冷たいことを知っている。そのプールは意外な穴場で,外人墓地から階段を降りて行った岡の中腹にある。井戸水を使ってるらしく,ちょっと肌寒い日なんかに行くと,冷たくて入る勇気がなくなってしまう。
今日はドピーカン。ずっと室内プールばっかりだったぼくは,もう嬉しくて,泳ぎまくってしまった。ガキがウザウザといる中をグングンまじめにクロール。なんだか水が澄んでいるし,冷たくて気持ちいい。ちょっと焼けたかな。Mちゃんの水着がまぶしい。横浜という土地柄なのか,タトゥーの人が多い。横浜に戻るといつも思うけど,なんかカッコイイ人が多いと思う。別にタトゥーのことじゃなくて。
兄貴の家によってから,夕方,横浜ベイサイド・マリーナのテラスで生ビール。うまくて死にそうです,おかあさん。暮れゆく空。入江のクルーザーを眺めつつ,タコスをほおばる。
花火屋ができそうなほどの花火。合計7万円分
友達関係,知人関係が30人ほど集まって,夜は八景島で花火大会。合計7万円の花火って,ちょっとしたもの。毎年問屋に買いに行ってるだけあって,もう好きなだけ花火をやってください状態。
連結して,工夫して,めちゃくちゃぶっぱなす
たくさんの花火をやるということの醍醐味は,組み合わせが自在なこと。50本ぐらいの打ち上げ花火を束ねて,一気に点火すると,そりゃすごいさ。下手な花火大会より,ずっと迫力がある。みんなであれこれ工夫して,「見せる花火」を作る楽しさ。

2000/08/20(Sun)

はじめてのスカイダイビング!

「これは神とのセックスだ!」。あの映画には,そういうセリフがあった気がする。ホントにスカイダイビングって,すごいよ。もう,感動だよ。
気持ちいいとか,恐いとか,そんな感覚よりも,「なんなんだこれは!」という感じ。まったく想像していたものとは違う。ヘリで雲の上に抜けたときの太陽,雲海,冷気,鳥肌。不安定なヘリの足,足をすくう風。すっと空に吸い込まれる感じ。猛烈に加速するスピード,風,音,肌触り。身体の軽さ,地平線,回転する感触。突き抜ける雲,迫り来る地面。地面に近付くにつれてマダラ模様のように上がって行くのが感じられる気温。パラシュートに引っ張られて急激に減速するときの足元の頼りなさ。こんな体験,やっぱりほかじゃ絶対できないし,ふつうの生活をしていて想像できる範囲にあるものじゃないと思う。飛行機の中から,「この雲の上に落ちて行くと,どんな感じがするのだろう」と何度思ったかわからないけど,やっと本当に落ちて行くことができた。

というわけで行って来ました栃木の藤岡。東北道で赤羽から30分ぐらい行ったところ。埼玉・栃木・群馬・茨城の4県にまたがる渡良瀬川遊水地のだだっぴろい草原が,藤岡ドロップゾーン。館林というところで高速を降りて,Webにあった地図のとおりに行くと,やがて河原に出る。どこらへんかなーとバイクでそろそろ近付いて行くと,土手にたくさんテントが張ってあって,なんだかバーベキューだかなんだかがはじまっている感じ。今日は午前中雲が多く,飛べなくてうずうずしているジャンパーたちが空を見ながらテントでのんびりしていたらしい。
受け付けを済ませると,まずビデオを見ながらインストラクターの話しを聞く。ビデオのBGMはVan Halenの「Jump」。歯切れのよいブラスのハーモニーと,アングロサクソンのほどよく割れた高音の声が草原に流れる。この「いかにも」な選曲に,ちょっと気分が乗って来るわけで。はっはっは。
ビデオ自体はタンデム・ジャンプ(2人一緒に飛ぶ奴)の流れを説明しただけのもので,5分ぐらいの簡単なもの。一緒にビデオを見ていた人の中には,映像を見ただけで「うぉー! こんななの? 恐ぇー」なんていって思わず笑いだす人もいたりして。ぼくはもちろんゾクゾクわくわく。インストラクターの説明によると,ジャンプするときの高度は1万フィート,約4000m。富士山よりちょっと高いぐらいのところから落ちて,だいたい40〜50秒間のフリーフォール。高度4500フィートでパラシュートを開いて後はゆっくり目的のポイントを目指して降りて来るということ。「タンデム・ジャンプは,ジェットコースターだと思ってください。インストラクターの指示にしたがってくだされば結構です」というだけで,特に何にも覚えることはない。ほかに言ってたのは,こんなこと。「押したり引いたり,叩いたり,打ったりというほかのスポーツと違って,スカイダイビングというのは,力を抜いてリラックスするのが基本という遊びなんです」。「飛んでいる間は,落ちているというより,浮いてるような感じです」。「ポーズを取るつもりなら,地上で考えておくといいです」。「息はできます」。「耳抜きはしてください」。「2重3重の安全装置がついてます」。「安定してしまえば,泳ごうが手を振ろうが何をしても構いません。ただし,足は閉じたままエビぞりの姿勢です」。
飛び出した直後に取るべき「エビぞり」の姿勢の練習だけは地上でやるんだけど,これが結構おかしい。数人単位で川の字に腹ばいに寝そべって,やるんだけど,みんなコトがコトだけに表情が微妙に真剣なんだよね。「では,両手は脇に抱えて足を閉じ,かかとがお尻にくっつくぐらいエビぞってください。はいっ! ……,あー,みなさんとてもお上手ですぅ」って,思わず笑うよね。
レクチャーと空中姿勢の練習は30分ほどで終って,後はひたすら順番待ち。雲が切れる時間が長くなるのを願いつつ,ちょぼちょぼ落ちて来る人を眺める。最初はわからなかったけど,事務所にいてヘリと無線でやりとりしている人が,拡声器で「ドロップ・ラン!」と叫ぶ瞬間というのは,上空でヘリがある方向に沿って水平移動して,順次ジャンパーが飛び出すよ,という合図らしい。その声を聞いて空を見ると,しばらくしてぽつぽつと色とりどりのパラシュートが空のあちこちに花開く。空気が澄んでいると4000m上空のヘリとか,ヘリから飛び出すジャンパーの姿がゴマ粒のように見えるらしいけど,今日はややモヤってて見えない。
いまのパラシュートは,むかし落下傘と言われていたようなものとは別物。とても性能が良くて,うまい人がやると,多少の風があっても,ぴったり数mの誤差で目標地点に降りて来れるという。確かに見ていると,2,3人いたカメラマンの人たちは,毎回毎回ぴったり同じポイントに真っ先に降りて来ていた。専属カメラマンは,体験ジャンパーより後にパラシュートを開きつつ,しかも彼らが降りて来る前には地上に降りて,彼らのランディングシーンを撮らないといけないから,パラシュートでの降り方はぜんぜん違う。意図的にほとんど「落ちて来る」ように操縦している。
パラシュート操縦の原理は簡単で,右をひっぱって右側をしぼませると右に曲がるというだけだけど,その引っ張り具合によっては,旋回なんていうレベルじゃなくなる。身体がほとんど真下を向くような姿勢になるまでパラシュートを傾けると,2,3秒は真下に「落ちる」。その「落ちる」を続けると,のんびり空の散歩をしている人より速く降りられるわけで,だからカメラマンたちは,みんなクルクル回りながら降りてくる。最初に見たとき,「あ,クルクル落ちてる人が! 失速してるよ!!」と焦ったぐらい。
うまい人のランディングを見ていると,これがとても不思議な感じ。地上数十メートルの地点で,真下を向く姿勢を取って一気に加速しつつ,旋回。そのままじゃ地面にぶつかるーという勢いで高度を下げて,ぴったりテントの高さで水平な姿勢に戻る。このとき,下から見ていると「びゅぅー,びゅぉー」と,パラシュートが風を切る音が聞こえる。たぶん時速40kmぐらい,真下に落ちてる瞬間は5,60kmは出てる。最後の着地の瞬間は,ブレーキをかけてるから,場合によってはほとんど停止に近い速度まで落ちるみたいだけど,思ったよりパラシュートの速度というのは速い。

12時に受付を済ませたぼくが出発できたのは,16時過ぎだったから,その間にたくさんのジャンパーを観察したり話が聞けたりした。
今日は夏休み中の日曜日ということで,体験ジャンプの「お客」が多く,ファン・ジャンパーと呼ばれるフリーのジャンパーたちは,優先順位が低く,後まわしにされてしまっていたらしい。それでも,定員7人のヘリに乗る仲間を集めるために,「ねぇ,今日飛ばないの? 一緒に飛ぼうよ。あと2人なんだけど」なんてやっている人がたくさんいた。天気がいい日だと,1人で4回,5回と飛ぶものらしい。
世間的には「スカイダイビングをやってるなんて変人だろうという」という見方があるのかもしれないけど,確かに,ちょっとクレイジーぽい人もいる。外国人傭兵部隊で落下傘やってましたと言われたら,「あー,なるほど」と信じちゃいそうな泉谷シゲル似の人とか,朝からハッパ,キマってんぜーとか言いそうな感じのパンク兄ちゃんとか。この兄ちゃん,きっとラザニア1つ食うのにタバスコ1本使うんだろうな。勝手な想像だけど。
そういう人もいるけど,ぼくが話したり見たりした限りでは,スカイダイバーといっても,結構ふつう。ただ,見た目はまるっきりふつうでも,ちょっとしゃべってみると,どことなく共通した匂いのようなものを持っている気がした。もしかすると,ジャンプ・スーツを着ている姿が似ているからかもしれないけど,ぼくはスキーヤーに近いものがあると思ったな。ジャンプ・スーツって,ちょっとゆったりしたツナギで(体重の違う人と落下速度を調整する目的でダボダボを着ることもあるらしい),夏は暑いから,地上にいるときは上半身は脱いじゃってて,その姿って,まんまスキーヤーなんだよね。違うのは,スカイダイバーは中にTシャツとか着てないこと。スカイダイビングは薄着のほうが気持ちいいらしい。
ジャンプのお誘いの言葉を聞いていると「今日さ,ネイキッドやろうよ」なんてのが聞こえてきた。思わず「ネイキッドって,どのくらいネイキッドなんですか?」と尋ねたら,「そりゃー,ネイキッドだよ。はだか。ギア(パラシュート)だけつけて,ギアにパンツを挟んで飛ぶ。途中でパンツが飛んで行ったりすると降りてから恥ずかしいけど,全裸って最っ高に気持ちいいよ」なんて答えが返ってきた。ひょほー,確かに気持ち良さそうだ!
何人かの人に「スカイダイビングを始めたきっかけって何ですか?」と聞いたら,一番多かった答えは「子どものころからやってみたかった」というもの。やっぱり,そうなんだ。「ずっとやりたいって気持ちはあったんだけど,きっかけがなくて。でも,若いころは一通り遊びと言われるものをやって,最後に,あ,スカイダイビングがあると思ってね。それで探して始めたのかな」と,こんがりと日焼けした,ある女性。「私スクーバもやるんですけど,あれは海じゃないですか。海に入って綺麗だなぁってだけでしょう。でも,空はぜんぜん違いますよ」,と横浜から来ているという30代前半(推定)の男性。何が違うのか説明になってないけど,なんとなく説得力はある。「家族は何も言わないんですか」と聞くと,「空から落ちるなんて言えないでしょう」「あきらめてますよ」なんて答えが。「いろいろやったけど,最後の砦だったかな。それだけはやめてくれって親に言われた」。そんな答えも。
スクールのスタッフの話では,体験ジャンプをやる人のうち,その後ライセンスを取る人というのは1割にも満たないらしい。口調からすると「1割」でもサバ読んでる感じで,実際はもっと少ないのだろう。ジャンパー人口は増えず,体験ジャンプの経験者だけがどんどん増えているのが,日本の現状らしい。スカイダイビングって,日本で定常的にできるところは関東に3カ所があるほかはないという。だから,「うーん,日本でジャンパーって全部で500人ぐらいかな」という話。関西方面や九州から,栃木までやってくる人も多いという。
ぼくと一緒に体験ジャンプをした人の1人は,大阪から来ていた。すごくまじめそうな,どっちかいうと暗くてサエない感じの30がらみの色白男。「なんでやろうと思ったんですか。やっぱり子どものころからやってみようと?」と聞くと,「いや,別に……」という答え。「高いところ大丈夫なんですか」。「いえ,ダメです(笑)」。「え,じゃあなんで?」。「もうええんです。人生,何も未練がないんです。それで来てみたんです」と本気なのか冗談なのかわからないコトを言う。スカイダイビングスクール申し込み時に必要な健康診断書には「目の疾患」「ふらつき,またはめまい」「血圧」なんていう普通の項目にまじって「自殺企図」というのがあるんだけど,一瞬,「なるほど」と思う。自殺願望じゃなくて「企図」というのが味噌って気がする。ぼくは企図は「無」だな。彼も企図は「無」なのだろう。
その人は救急医療関係の外科医で,ともかく仕事がハードで,どうやら,そのことで精神的にまいってる様子。年に1週間の夏休みが取れたほかは,土日も仕事。ぜんぶ仕事。どんどん運ばれて来る瀕死の患者の胸や頭に管を突っ込むようなことをずっとやってるらしい。胸を開き,骨を針金で固定し,心臓を手で抑える。運ばれて来る患者の20人のうち19人は死ぬような現場にいるという。「もうちょっと繊細なね,メスで腸を切るとか,そういう医療に移りたいんです。救急医療って誤診がないんですよ。たとえ間違った判断で処置をしても許される。問題のない肺に穴をあけても責任はない。そんなこと言ってられへんのです。とにかく命を救う努力を全部やるんです」。診断に迷いがあって処置が遅れるよりも,ともかく処置ということらしい。「やりがいあるじゃないですか,命が助かれば,家族は喜ぶでしょう」。「そう,だから天職やと思ってる奴らはイキイキと働いてますよ,でも,私はちょっとね……」。
なるほど。「で,なんで人生もうええ,なんですか?」とシツコク聞いてみる。結局,仕事がハードでつらいという以外に原因がなさそうだと勝手に判断。インターンとして仕事を始めて1年ちょっとというから,新人にありがちな仕事の過負荷状態なのじゃないかと想像しつつ,「別にこの先,2年も3年も仕事が大変なわけじゃないでしょう? 先輩のお医者さんとか,うまーく手を抜いてるんじゃないですか。それにホンマに嫌やったら,やめりゃいいだけじゃないですか。医者やらんでも楽しく生きてけるでしょうに」と,無責任なコトを言ってみる。
サエない顔をしていたその彼とぼくは,その日ほとんど最後の最後のジャンプだった。だから降りてちょっとすると,どんどんテントが畳まれ,人が減っていくような状態だったんだけど,彼はぼんやりと草原と空を繰り返し眺めて「去りがたいもんがありますね……。あんなに空がキレイなもんやと思わへんかった……」と,いつまでも微笑みをうかべていた。ぼくはぼくで,結局最後まで名前を聞かなかった彼が去るまで,なんとなく立ち去りがたいものを感じてぼーっと立っていた。ぼくはこういうのがどうも苦手。旅先なんかであるイチゴイチエ的な連帯感。こういうとき,いつもぼくは「じゃあ,ぼくはそろそろ。またどこかで」と良くわからない挨拶をして,オレはナニ言ってるんだと恥ずかしくなる。いよいよ,バイクにまたがって振り返ると,彼はこれといった表情も作らず,ぎこちなく手を振ってた。
そういえば一緒に飛んだファン・ジャンパーの1人はやっぱり医者だった。まあ,偶然だろうけど……。

だいぶ話がそれてしまった。閑話休題。時間が前後するけど,飛ぶ前のシーンから実際のジャンプまでを書きます。
いよいよ名前が呼び出されて,順番が来た。一緒に飛んでくれるインストラクターは,まじめそうなおじさん。どことなくジャンプ・スーツが飛行機の整備士っぽい。ファンキー系のノリのいい人がいいと思ってたので,ちょっとがっかり。ジャンプ・スーツを身に着けつつ,「最悪,何mで開けばパラシュートって間に合うんですか」とニコニコと無邪気な質問したら,静かに諭すように「チキンレースと同じだよ。ぎりぎりでブレーキを踏むのが何mかなんて決まってない。それはスポーツじゃない。誰がパラシュートを開いても安全に降りれる高度,それが最後の高度,4500フィートだよ」と教えられた。そのときは純粋な好奇心から10mか100mか300mか,あるいは500mなのかを聞きたかっただけなのに,なんかちょっとはぐらかされたような,冗談を真に受けられたときのような気分だったけど,少しして考えなおしてみれば,当然の答え。内心,ちょっと憮然としていたんじゃないかと思うと,むしろ静かに答えてくれただけでも,「ああ,この人は信用できるな」という印象。タンデム・ジャンプというのは,ハーネスで2人の身体をくっつけるわけだけど,その作業をヘリの中でするのは全部インストラクターで,言ってみれば命をあずけるようなものだから,落ち着いた,信用できる人で良かったと思った。口数少なに,ぼくの靴ヒモをしめなおしてくれる姿に,かつてスキーブーツをはかせてくれた父親を姿を思い出したりして。かすかな笑みとともに,静かな声で「さあ,行こうか」と,肩を叩かれる感じが悪くない。
テントが並ぶ土手から,ヘリの離着陸する草原まで,車で5,6分。一緒に乗り込んだジャンパーを質問攻めにする。生来の聞きたがりの性格が,職業的に助長されているのかと我ながら思う。
手のコウをまるまる被う高度計は,巨大なスウォッチのように見える。0から10まで目盛があって,高度1万フィートまではかれるらしい。シンプルな白い文字盤は4から3のあたりが黄色,3から0の間が赤に塗分けられている。色の意味は,あまりにわかりやすい。人によっては両手のコウに2個とか,胸のあたりに1個とか,高度計をつけている。高度計の確認は,もっとも大切なことだから,スクールに入って最初のジャンプというのは10回ぐらい高度計を見るように指示されるらしい。「スチューデントの間はね,飛んでる間,ずっと忙しいよ」なんて言ってる人がいた。
一番謎の姿勢制御について聞くと,「もう意識してないから,右に回ろうと思うと右に回るんだよ」という答え。「基本は重心の移動。手や足でも操作できるけど。水平方向の移動は手をまっすぐ伸ばして脇をしめる姿勢がもっとも速くてね,でも,歩くのより楽だよ。浮いてるんだから。慣れるといろんな姿勢ができて楽しいよ。そのうち仲間と飛びたくなるんだ」とか。
まじまじとギア(パラシュート)を見ながら,あれこれ説明してもらう。そもそもあまりパラシュートのことなんてまじめに考えたがないから,それがリュックと同じようにかつぐもので,リュックとの違いが,肩だけでなく,股にもヒモをかけるというスタイルというのが新鮮に見える。メインパラシュートを開くためのレバーのようなものが,2個あるとは知らなかった。メインが開きそこなったときに,それを切り離すためのレバーもあって,さらにリザーブパラシュートを開くためのレバーもある。
ちゃんと体重の違いでパラシュートのサイズを選ぶんだとか。タンデム・ジャンプ用のパラシュートは,2人分だから十数kgあって,結構重たい。「タンデム用と1人用で結構違いがあるんですね」と言うと,「1人用は7kgぐらい。軽いよ。ちょっと担いでみる? で,ちょっと飛んでみれば?」なんて冗談が返って来る。マイギアを買うと60万円ぐらいで,それで1000回は飛べて,100回飛べばレンタル料分の元は取れるという。
パラシュートも高度計もスーツもヘルメットも全部アメリカ製。というより,日本製品なんてない。日本ではスカイダイビングという遊びはまったく市民権を得ていない。法律もなければライセンスも基準もない。いちおうあるのは,航空法の90条,「運輸大臣の許可を受けた者でなければ航空機から落下傘で降下してはならない」という1つだけ。だから,日本のスクールでは,USPA(アメリカパラシュート協会)の基準をそのまま持って来て自主的にルールを守り,ライセンスを発行しているというのが現状らしい。
「その予備のパラシュートって今までに開いたことあるんですか」と聞いたら,その場にいた2人のうち1人は「1000回目ぐらいのときに,1回やったことがあるよ」と,こともなげに答えた。「スカイダイビングって,何かはじめてのことをやると,みんなにビールを振舞うんだけど,だから,リザーブを開いたときも,ビールを配ったよ」ってニコニコ話す。なんかゴルフのホールインワンみたいだけど,それにしてもちょっと恐い。恐くないんですかという質問には,「本質的にスカイダイビングは危険な遊び。恐怖心がなくなったら終わりだよ」なんて言葉が返って来た。「最近,スクールの生徒でも1人リザーブ開いた奴がいるってよ。タンデムで」と,隣の人が言う。地面に背中を向けたまま開いてしまって,ナントカとナントカが絡まって,メインが開かなかった。それでインストラクターはメインを切り離してリザーブを開いたという話しなんだけど,「でも,よくメインを切り離せたね。(ナントカ)がひっかかってたんでしょ? で,そのスチューデントってビール配ったの」「いや,まさか。それはインストラクターのほうが配ってたよ」とか話がはずむ。

そうこうするうちに,ヘリの離着陸地点に到着。先に飛ぼうとしているグループが,空中での姿勢について楽しそうに打ち合せしてる。後ろからみると亀のコウラのようなコンパクトで結構かわいいパラシュートが,ランドセルに見える。だから,見ようによってはフォーメーションの打ち合せは,下校途中の小学生がプロレスごっこで戯れてるような感じに見える。カラフルなジャンプ・スーツを着ているので,コスプレっぽくも見える。ナントカ戦隊ゴレンジャーみたいな。あ,古いか。そういえば,モモレンジャーそのものって感じの女の子がいた。
ぼくってヘリに乗るのが,そもそも初体験だった。なんとなくゴンドラに乗って山頂に行くときのスキーの気分。狭い機内に,7人で乗り込み,みんな,じべたに座る。足を互い違いにして,じっとジャンプできる高度に着くのを待つ。といっても,7,8分で高度1万フィートに達するんだけど。
夏はドアをあけたまま飛ぶのだけど,これ,高いところが苦手な人だったら,おしっこちびるかも。ふわっと機体が浮いて旋回したとき,もろに地面が下に見えた。一緒に乗った女の子がさっそく最初の悲鳴をあげる。あけっぱなしのドアの脇に座っているのは,もちろんベテランのジャンパーだけど,良く恐くないなと思うほど,平然と座って下を眺めている。ある高度まで来れば大丈夫なんどろうけど,数十mの段階で落っこちたら死んじゃうんじゃないかと心配になる。
「そろそろゴーグルつけようか」と,インストラクター。隣のジャンパーの高度計を見ると,ぐんぐんとヘリが高度を上げているのがわかる。爽やかな空気が入ってきて,徐々に涼しくなる。眼下に見える渡良瀬川と湿地帯がだんだん地図のように見えてくる。飛行機からは見慣れた離陸,高度上昇の感じも,こんなに違うものかと思った。たぶんドアがあいているからだと思うけど。
雲の上に出て,一面の青空と雲海が見えた瞬間,ぞくぞくと鳥肌がたった。すでにTシャツじゃ寒いぐらいに気温もさがっている。手を伸ばすと雲に手が届きそう。ヘリのエンジン音がうるさいはずだけど,とても静かな世界なんだと思った。「空がそこにある。空の中にいるのだ」という印象。
ふと見ると,操縦席の真後ろ,ぼくの背中あたりに車用のGPS(カーナビ)が取り付けられていて,インストラクターは地上とやりとりしながらドロップポイントを検討している様子。地上から雲がない「ブルースカイ」の位置を指示しているらしい。高度計はすでに目一杯まわりきって1万フィートに達したとわかる。インストラクターがぼくの身体をゆすりながら耳もとで「いち・に・さんっで飛びだすからね」と最終の確認をする。「まず彼が1人で飛ぶから,そうしたらその次だ」と,いよいよジャンプのタイミングが近いことを知らされる。目の前に座った女の子は,まだキャアキャア言ってる。後で聞いた話だと,ごくまれに,100人に1人ぐらい,上空に行くと目が点になって動けなくなる人がいるらしい。ぼくはといえば,もう期待で胸がいっぱい。
「ようし,いいぞっ!」。GPSを見ながらインストラクターが声をかけると,お医者さんの彼が,まずニッコリ笑って飛び出した。「ひゃっほぉー!」。あっと言う間に,あけっぱなしのドアとぼくの間にあった身体が1つ消える。
すでにぼくの背中はタンデム・ジャンプするインストラクターのお腹とくっついているから,移動は楽じゃないけど,一歩一歩とドアに近付く。「飛べる位置についたと判断したら,合図するから」と言う言葉を聞き終わらないうちに,ぼくはヘリから足を出す。と,足が風に流されて,うまくヘリの外に出られない。ドロップのときというのは順番にジャンプする人たちがなるべく水平方向に離れたほうが安全なので,ヘリと言えども,ドロップ・ランのときは結構なスピードで水平移動をしているらしい。
力を入れて足を出す。ヘリの足に両足を乗せ,空をのぞき込める位置につくと,さすがにドキドキする。瞬間,「手をハーネスへ」を忘れていた自分に気づいて,ハーネスを握りしめ,振り返る。「いきましょう!」。
いち・に・さんっ!
落ちる! 自由落下する系は無重力状態と物理的には等価なんて,嘘だ。ものすごい力で引っ張られてるよ,地球に!! 何が起こったかわからないけど,確かに落ちていると思いながら,とりあえずエビぞる。びよよーん。
思いきり「ひゃっほー!」と叫んでみても,風の音にまったく勝てない。ぼくの声は後ろのインストラクターの耳には入っていない。そうか,巨大な力として感じているのは重力じゃなくて,風なんだと気づく。日頃バイクで100km近い風を素肌と顔面に浮けているから,ふつうの人より耐性はあるかもしれないけど,時速200kmというのは,これまたすごいパワー。時速200kmの終速度にはたぶん5,6秒で達するんだろうけど,最初の数秒で確かにスピードの変化がわかる。あっというま(たぶん2秒ちょっと)に100kmぐらいになるのが,肌でわかる。「あ,これはバイクと同じ風だ。だけど,まだ大きな力がかかって加速している。この先はどうなってしまうんだ」と思った瞬間には,まったく経験したことのない風につつまれた。ゴォーとかグァーとかビュォーとか,そんな音が混じったような音が聞こえて,目の前は真っ白な雲だけが見える。心なしか雲が迫って来る感じ。後で聞いた話では,雲の出る場所は視界が悪くて危険なので,基本的にジャンプはやらないらしい。だから,そうそう雲をつきぬける経験というのはできなので,ぼくはラッキーだったのだとか。
いつになったら姿勢は安定するのだろうか。ハーネスから手を離していいという合図はどのくらいで来るのだろうかと考えていたら,ちょうど肩を叩かれて,手を広げてよいことを知らされた。安定してみれば,確かに風が強い中で浮いているような感じ。ぐるり360度の周囲に雲と空の切れ目が見える。なんとなく,こうじゃないかと手で泳いでみたり,バランスを変えてみたりして方向を変えようする。さすがにインストラクターが姿勢を制御しているのか,まったくぴくりともしない。と,方向を変えたいぼくの意図を悟ったのか,ぼくとインストラクターは右に左に,軽くクルクル回り始めた。うひゃー,気持ちいい。真下を見て,それからお腹の上からオチンチンの方向をのぞき込んでみる。とても奇妙な姿勢で雲海を見ている自分を想像する。うーん。できればでんぐりがえりしたかったけど。
高度計こそ見ないものの,ぐんぐん高度が落ちているのが気圧と温度の変化でわかる。本当はアナログなグラデーションになっているのだろうけど,高度による温度変化が層になっているように感じられる。たぶん人間の温度に対する感度があまり鋭くないからだろう。数秒に1回の割合で「温度の違う層に入った」と肌が告げる。それと同じぐらいの頻度で耳抜きをしないといけないほど気圧もぐんぐんあがっていく。涼しくて,爽やかだったはずの空の空気が徐々に生暖かい,湿っぽい空気になっていく。理屈ではわかっていた,そういった高度による温度の変化がはっきりとわかったし,空を見上げたときに今までどうしてそのことをリアルに感じられなかったのか,ちょっと不思議に思う。生暖かい空気の底にある地上になんか戻りたくないと思った。
真っ白の雲に入って,一気につきぬけたと思うと,目の前にまたしても地図のような地面が広がっていた。その迫り方がふつうじゃなくて,ぐーんと地図を一気に拡大しているような感じ。ものの2秒ぐらいと思う。これは恐かった。そろそろパラシュートを開くんですよね,と心の中でインストラクターに話かけて,さらに1秒ほど経ったとき,背中で何か,ごそごそした感じがわかった。
「さあ来るぞ」と,急減速の覚悟を決めていたけど,想像以上にパラシュートで減速するのは気分のいいものじゃない。そもそも,あまり身体に合っていると言えないレンタルのハーネスのせいで,股の肉はぐいぐい引っ張られるし,なんだか絞首刑で「ぐへぇ」と頭を垂れるような感じ。あ,たとえが悪いですね。減速していても,足もとには地面がひろがっていて,まだそこに巨大な空白があるのがなんとも心細い。
スピードが落ちてしまえば,インストラクターと話せる。「どうだった?」「やー,すごいすごい! 感動しました!!」とかやりとりしながら,「じゃあ,ちょっとパラシュートの操縦やってみる?」なんて言って,操縦させてくれた。体操の吊り輪のような操縦用のヒモを両手に持つ。右のヒモを引けば右に,左ヒモを引けば左に旋回する。2人用だから引っ張るのは結構力がいるけど,確かに思ったように方向は変えられる。
ゆっくりと,目標のテントを目指して降下していく。空が名残惜しい。地面にツブツブといる人たちの上を足をぶらぶらさせながら飛ぶのは,なんだか奇妙な感じ。「合図したら足を前にあげて」とインストラクター。「さあ,行くよ」と言ったと思うと,加速して一気に地面に近付く。最終的にふわっと着地するためには,たぶんそれなりの揚力が必要で,だから加速するのじゃないかと勝手に想像するのだけど,それにしても地面に向かってスピードを増すのはちょっと恐い。
駄目だと思ったら転んでもいいけど,足を突っ張るのだけはしちゃ駄目と聞かされていたけど,スピードが速すぎてどっちも嫌だよって感じ。と,思うと,スピードが落ちはじめる。それでも速い。迷ってても仕方ないので,思い切って,テレビで見るようにトコトコ走ってみたら,8歩ぐらいで案外ちゃんと立ち止まれた。「おっ,ぉぉぉぉ,うまいうまい」と褒められて良い気になる。
パラシュートを畳むインストラクターのそばでぼんやりとしながら,「自分で畳むんですね」とか訳のわからないコトを口走っていると,スタッフの1人が「この人はタンデム・ジャンプをしました」という証明書をもって走って来た。その紙を受け取りながら,インストラクターと握手。思わず笑みがこぼれる。うーん,ちょっと感動。

「一緒に飛ぼうよ。自分で自由に飛べると,おもしろいよ」という誘いをたくさん受けた。どうも,雰囲気的にはクラブの人たちは「タンデム・ジャンプをやる人というのは,ほとんど冷やかし。話のネタづくり。自慢話の1つでおしまいなんだよね」と思っていて,あんまり「やりませんか」的な発言はしないんだけど,ぼくは見るからに「やりたい」オーラが出てたらしい。
今すぐはむずかしいけど,時間的,経済的余裕ができたら,ライセンス取って自分で飛びたい。いつになるか分からないけど,たぶん,やることになると思う。

2000/08/21(Mon)

久々の日本酒

月曜日。ぼちぼち仕事をしつつ,原稿を書く。夕方の打ち合せが伸びてそわそわ。20時半の食事の約束に遅れそう。会議や打ち合せをさっさと終わらせるコツは,時計をちらちら見ることなんかじゃなくて,どんどん発言して,どんどん「〜しましょう」的発言を繰り返すことだよなぁと思いつつ,やっぱり時計をちらちら見てしまう。
ほぼ(?)同業者のSさんと,待ち合わせ。赤坂の和風なお店で,久しぶりに日本酒を冷やで飲む。カラアゲのコチヂャン風味がうまい。「北海道山登りの旅1週間+α(名残りをおしんで延泊)」から帰ったばかりのSさんは,こんがりいい色に日焼けしている。本人が言うほどには別人でもなかったので,ちょっと残念。
Sさんが担当するのは,ぼくがやってる雑誌の,もしかするとちょっぴりだけ対抗誌と言えなくもない雑誌。といっても,Sさんの名刺は「記者」で,ぼくが名乗るのは「編集者」か「ライター」(おお,恥ずかしげもなく!)。たぶんいろいろ違うんだろうなぁと想像しながら,結局仕事に絡んだ話が多くなる。「S記者! NTTの抱えている問題はずばり何デスカッ!?」とおどけて聞いてみたら,わりと真剣な回答が戻ってきて,ちょっとぼくは焦ったのでした。
本当に「じゃあ,また」の挨拶がぼくは下手だなぁと思うのだけど,最近よくやってしまうのは,「えーと。またメールしますぅ」という奴。地下にあって,ちょっと隠れ家的なお店を出て,歩く方向が逆だとわかった瞬間に,ぼくは,今日もそう口走ってしまった。
23時。不況とはいえ,夜はまだこれからと言わんばかりの通りに沿って歩き始める。ちょっと歩いて立ち止まる。また歩きだして立ち止まる。次に歩き出したときに,電話をかけた。「もう1杯飲みませんか」。
2人とも飲んべぇなだけなのか,そういうマだったのか,結局また反対向きに歩きだし,元いた場所あたりに戻ると,とある店で飲み直し。

2000/08/22(Tue)

トイレの個室にボクの写真が!

たぶん,1995年ごろ。25歳ごろに撮られたとおぼしき,ボクの写真が,会社の男子トイレの個室に突如置き去りにされていた。「なんか西村くんの写真が一番奥の個室に立てかけてあるよ」と,同僚に知らされて,ちょっとゾゾーッとする。怨み?
見に行くと,確かにトイレの個室に写真が立てかけられてある。ご丁寧にトイレットペーパーの芯に細工して,簡易写真立てまで作って……。忘れモノ? いや,ぼくじゃない。え,ぼくのファン!? げっ,ホモ?? げげげ,ヌいた? うそー。やめれー。密かに想いを寄せているなら告白してくれぇぇ。打ち砕いてやるからぁぁぁぁ。うわぁぁぁぁ。いやぁぁぁ。そんな必要もないのに,おもわずオシリの穴に力を入れて防御態勢に入る身体。あ,でも,シメればシメるほど,喜ばれるのか……。とか想像してしまって,うわわわぁぁぁ。
あまりに恐ろしくて,すぐさま写真をガバッとつかみ,席に戻る。まじまじと写真を見ると,だいぶ若くて,ぽっちゃりしてる。髪がかなり長くて,微笑んでいる。バックに写っている本類から94年ぐらいかと想像する。が,会社の中には違いないけど,どこで撮った写真だか記憶がない。誰が撮ったのか,そもそもなんで今ごろになって,そんな写真が,よりにもよって男子トイレから! わ,わからんっ!
イタズラの主は,隣の編集部のSKMさんだった。「お,写真みつかったかね。いやー,キミの写真,トイレ」。な,なんで,そんな?
コトのなりゆきは,こういうことだった。フロアの引っ越しを前にして,ぼくは大量の本を捨てた。その中に「Linuxを256倍使う本」という,95年ごろに出版された本があったんだけど,その本のページにシオリがわりに,ぼくはたまたま手元にあった写真を挟んであったらしい。で,ぼくが捨てようとして雑誌や本を捨てる場所にほっぽらかしてあったものを,誰かが拾ってトイレに持ち込み,読んだらしい。で,ポトリと落ちたボクの写真を見付けたSKMさんが,本を持ち出し,写真だけを置き去りにした。
それにしても,なんで写真だけ残すかね……。始めてストーカーに狙われる女の子の気持ちがわかった気がしたのでした。これは恐いよ。

2000/08/23(Wed)

一歩,イルカに近付く

午後は青山の某社に取材へ。テレビ会議システムとNetMeetingによる画面の共有で,四国と東京が結ばれる。まったく違和感がない。すごい時代になりました。
取材後,そのまま青山通りから明治通りを北上して新宿のプールへ。20分で500m泳ぐ。いまさらだけど,うまい人の泳ぎを見ながら,フォームを研究。ちょっとクロールがうまく(速く)なった気がする。泳ぎながら,ハッとする。全体会議……!。ああぁ,忘れてました……。ひぇぇぇ。まあ,内容はほぼ大ボスが言ってたとおりなんだろうけど。戻り時間を17時にしておいて良かったなぁと思ったり。ところで,このWeb日記,編集部の人で見てる人がいたら,是非「見てるぜ」というメールを。のちのち,書く内容を考えますので。はは。
そろそろ仕事がたまりまくって,「今までヲレは何をやっていたんだ」と思いはじめる時期。どばどばっとメールの返事を書く。「言いづらいことを言うのが編集者の仕事」とは良く言ったものだと思う。ほいほい企画や原稿を受け付けていたら,いくらページがあっても足りない。

夜,元先輩のAさんと中華を食べに出る。やっぱり生ビールがうまい。フリーランスとして独立したAさんから,あれこれ近況を聞く。そうだ,今月はAさんにたくさん書いてもらわないと。

2000/08/24(Thu)

テレビとロケット?

工学院大学にミレニアムTV展というものを見に行く。巨大なプラズマ液晶に映るHDTVの映像をみても,たいしてきれいじゃないなぁと不思議に思って眼鏡をかけてみたら,やっぱりびっくり。単にぼくの視力が落ちているだけか。走査線の数が,現行テレビのほぼ倍になる1050iのHDTVって,異様に画面が美しい。
そろそろ発売されるBSデジタル対応のチューナーやテレビ,D-VHSのプロトタイプ製品を眺めつつ,メーカーさんのお話を聞く。ふむふむ。ふむふむ。やっぱり研究開発系の会社の人のほうが話はおもしろい。3Dテレビ放送の実験設備一式とか,番組内ナビゲートシステムのようなものとか。すでにARIB-10Lという名前で,番組内インデックスというかメニューのフォーマットは標準化されているらしい。
放送用のBMLなるマークアップ言語について,あれこれメーカーに話を聞いていて,ちょっと力が抜ける。デジタル放送がIPに乗る可能性という話をすると,「双方向という意味ではアップストリームで,現在は2400bpsの……」なんて反応をする。「いや,そうじゃなくて,放送自体がIPに乗るような時代って来るのでしょうかという意味で」というと,キョトンとしてる。放送やってる人って,いまだにまったく放送は放送だと思っていて,ネットはネットだと思っている。かつて交換機やってた人たちが電話は電話で,ネットはネットだと思っていたように。もう電話はIPに乗るのはほぼ確実だよね。そりゃHDTVがぽんぽん乗っかるようなブロードバンドなんて,まだ先の話かもしれないけど,はっきり道筋も見えてて,不可避のことなんだから,もうちょっと何か考えがあってもいいじゃないかと思う。銀行が護送船団だの,NTTがお役所企業だのと言ってるテレビ放送業界こそが,不可解な放送法という砦に囲まれてアグラをかいてる最後の護送船団業界じゃないのか。テレビ屋とネット屋は永遠にわかりあえないと言われているけど,どちらも基本的認識は同じ。両者は融合する。としたら,のみこまれるのはテレビに決まってるじゃないか。

夕方,行くつもりのなかった取材に急きょ同行。赤坂のTBSで,旧ソ連の「ミール」という有人宇宙ステーションを設計したロシア人の技術者に話を聞く。タクシーの中で斜め読みしたにわかじこみの宇宙開発事情で,ようやっと質問をぶつけてみるのに,どうも,ロシア語=日本語の通訳者の質が低すぎて,まったく質問さえままならない。通訳してくれた人から返ってくるのは,質問からはかけはなれた答えと,必要以上の通訳者の微笑み。そして,かなり集中して聞いていないとわからない,崩れまくった日本語。はぁ。英語っぽいボキャブラリーと,イエス/ノーぐらいしかわからないので,いかんともしがたい。取材をアレンジしてくれたTBSの人が密かに「ロシア人は話が長いですから(笑)」と言ったのに,妙に納得。質問を途中まで通訳した段階で,5倍も10倍も話す。スパシィーバ(ありがとう)と言って握手はしたものの,なんとなく相手も疲れさせてしまっただけではないかと心配。
国威発揚(という言葉は通訳者にはまったく通じなかったけど)というわかりやすい目標があって米国と競争していたころと違って,宇宙開発競争は,今は何が原動力なんですかと聞いたら,「以前より米国との競争は激しいよ。われわれは株式会社だからね」と答えられた。あ,そっかと,その時はひざを打ちつつ,しょーもないことを聞いたもんだと思ったけど,ぼくが聞きたかったのは,株式会社にロケットを発注するプロジェクト自体の原動力。つまり,直接的に利益に結び付きづらい宇宙開発に,ヒトは何のために金をつぎこむのかってことに対する,ロシア人の見解。まあ,スポンサーを探しに日本に来ているような人だから,そりゃ是も非もなく,宇宙とは開拓すべき未開の地ということなんだろうけど。

帰りがけ,赤坂駅前のインド料理屋「モティ」で劇的に辛いマトンキーママタールを食べる。久しぶりに途中で食べるのをやめようかと思った。辛くしてください,と注文して,さらにそれで運ばれて来たものを,もう1度「辛くしてください」と戻したぼくが悪いのだけど。それにしても,もうちょっと中間段階はないのか。

2000/08/25(Fri)

牛丼2杯分のビールのカロリー

(きぬた)にある,N社研究所を取材。会社からバイトMの車で行く。思ったより環八が混んでなかったので,早めに着く。時間潰しに入ったマクドナルドでハンバーガー。
1日1食生活を続けているぼくは,今日はもう食べまいと思ってたのに,同行したAさんに,取材後,ラーメン食おうと誘われる。1日1食のむずかしさは,食事のつき合いのこと。昼ごろに食事に誘われて,「いや,今日はもう食べたので」と言って断るわけにもいかない。そんなわけで,久しぶりに2食たべる。ほとんど立て続けだったので,ちょっと,ぐへぇって感じ。明大前にある神戸ラーメン。おいしかったけど。

なんで日々1食しか食わずに生きていけてるのか,考えてみれば,我ながらちょっと不思議な気もする。61kg前後で体重の減少も止まった気がする。人間の消費カロリーって,そんなもんか?
毎日欠かさず飲んでいるワインが効いてるのかなぁと思って,カロリージテンというのを引いてみた。たとえば,ぼくの昨日の酒量は,ビールが3本とワイン300ml程度。ビールは1缶で140kcal,赤ワインは100mlで70kcalらしいから,140×3+70×3=650kcal。これは,うな丼1杯に相当するらしい。さらに,たとえば8月5日,ビールを飲みすぎたかなぁという日の場合,ビールが2500mlでワインが200mlだから,140×7+70×2=1120kcal! 牛丼2杯分やんか!
なるほど,ぼくは1日1食生活のように見えて,実はほとんど2食分のカロリーを摂取しているわけだな。ふむふむ,クロールが10分で230kcal……,つーことは飲酒分を消費するには毎日30分以上は泳がないと! 真の1日1食生活への道は険しいぞ。いや,お酒を控えればいいだけのことか……。次のテーマは節酒だな。エチルアルコール漬けの脳味噌が全部溶けてしまうわないうちに,なんとか。……。いや,口にしたからには実行しよう。今日から節酒だ,節酒ッ!! とりあえず,ビールをやめてライトビールにするか。

2000/08/26(Sat)

ゆく夏

土曜日。午後,プールで700m泳ぐ。泳いだ後,ヘルメットを手に持ったまま公園内をバイクで走ってみる。木もれ日,水の匂い,セミの声,子どもたちの声。ああ,夏休みが行くのだな,と思う。
夕方,ウィークデーに着手できなかった原稿を書き上げようと思って出社したけど,編集部にだーれもいない上に,クーラーが切れていて妙に暑いので,なんだかやる気にならず。まもなく出社してきた後輩のSと遊んでみたり。編集部に届いたばかりのStickShotという,小型のオモチャデジカメを勝手に開封して遊ぶ。10万画素という驚異の低解像度。そのかわり小さくてめちゃくちゃ安くて,軽い。これは結構いいかも。

とうとう語学学校に申し込んでしまった。10月末に出発予定だ。

2000/08/27(Sun)

why? gimme a reason.

あまりに天気がいいので,いつも行く新宿の室内プールは嫌だなぁと思って,大宮八幡近くの杉並区営プールに行く。すごい人! というか,すごいガキの量。せっかくの50mプールなのに,途中で必ず誰かが邪魔になって,とても泳ぎきれない。というか,ビーチバレーとウキワでニコニコ親子だらけの中,1人で着々と泳いでる奴は,ぼくぐらいだったかも。行く場所と曜日を間違えた。プールサイドでちょっと日光浴。
昼過ぎ,なぜか下北沢。なくしてしまったサングラスの代わりを買おうと思って行っただけなのに,なんとなくチョーカーも買ってしまった。
夕方出社して,原稿を1本出して帰る。まだまだあれもこれもやらないと……。ぐへ。

近況報告のメールの返信に,ウチの親父はこんなコトを書いて来た。「私の痛風も概ね快復しました。一緒にサーフィンをやってみようかと思っています」。父60歳,息子30歳(まもなく)。親子で始めるサーフィン。年齢的には,ちょっとイカれ気味だよなー。どっちも。

2000/08/28(Mon)

今日も中華

そろそろ仕事がつまりぎみ。むぅ。夕方,六本木の某社取材。うわー,しゃべるしゃべる。2時間も理路整然としゃべってくれました。話もおもしろい。だいぶテレビ業界のことがわかった気がする。いい加減動き始めなければやばい,という認識と,現状儲かってるのだからこれでいーのだと,という認識の埋めがたい温度差。テレビ局というのは,変なトコだなぁ。一体テレビ業界のビジネスモデルの変容による再編というのは,いつやってくるのだろうか。
帰りがけ,六本木交差点そばの「香妃園」で「牛肉細切りピーマンうま煮ごはん」を食べる。なんか昨日と同じようなものを食ってる気が。ホントはこの店,「トリ煮込みそば」を食うのがデフォルトらしい。
夜,打ち合せスペースがサロン・モードに入ってしまう。サロンと言うと聞こえはいいけど,単なるダベリ。かなり,だらだらとおしゃべり。途中からやってきた編集長に,むかしむかしのコンピュータ(VAX)の話を聞く。ふと気づくと2時過ぎ。やばい,明日は朝イチで取材なのに。

愛をやさしい力とみくびったところから誤謬は始まる。(有島武郎)

2000/08/29(Tue)

中身を見てから盗れ

午前中,アジャンタ前にある某テレビ局で取材。アジャンタで昼飯。久しぶりのマトンカレーが辛い。昼,新宿にある会社を通りすぎて杉並のプールで20分だけ泳ぐ。さすがに平日で人が少ない。
夜,神楽坂の同期のK宅でマリオテニス大会。仕事はつまっていても,こういう誘いには乗ってしまう。夜中遅くまでビール飲んでラムを飲んで。やばい。
うとうとと横になって寝てたら,ほとんど朝やん。帰ろうと思ってバイクを見ると,荷台に載せてあった紙袋がなくなっていた。信じられん。中身を見てから盗れよな。水着とゴーグルとキャップ,濡れタオルだぜ,ちくしょう。たぶん中を見てどっかに捨てたんだろうけど,盗られた本人としては,結構いたい。また買うとなると安くない出費だ。はぁ。

2000/08/30(Wed)

さるさるさる

『人類進化再考−−社会生成の考古学』,読了。時間がないので,とりあえず,全体を代表すると思われる段落の引用だけメモ。
このように,食物分配は,個体維持行為の社会化という社会関係の根本的な変革であるだけでなく,経済とコミュニケーションの進化における一大転回点であったと考えられる。食物が個体間を動くことは,自己の客観視,他者理解,所有,価値などの出現と連動している現象でもあった。これらのことによって食物分配の出現は,そこでおこなわれる食物分配がいかに量的に未熟であっても,その後の制度化された食物分配の出現に匹敵する社会的な飛躍というべきだろう。チンパンジー社会に見られる子殺しや戦争,同盟の形成や裏切り,道具に頼る生活,薬草を使う自己治療などは,この社会的飛躍のうえに現象しているのである。
ピグミーチンパンジー(ボノボ)を研究・観察した人の本。サル関係の本を読むと,自分を含めて周囲の人間が,みんなサル的に見えて来てしまう。本質的には大差がない気がする。ぞっとするほど,人間はサルなのだ。

2000/08/31(Thu)

月末,ゆく夏

ばりばり仕事。夏がゆこうとする月末,焦り始める。編集後記を寄こせなんてメールされても,まだほとんど山の登り口だよ。やばいやばい。今週末で一気に駆け登るぞ。

以下,パソコンの話。というか,Linux。興味ない人はパスどうぞ。
ノートPCに入れたKondara MNU/Linux 2000(間もなく発売されるはず)というLinuxの画面がなかなかカワイイ。せっかく手に入れたノートマシンを,あんまり使ってなかったけど,あれこれ手を入れて持ち歩きはじめると,なんかイトオシイ感じ。マシン設定というのは,箱庭療法というか,盆栽というか,やりはじめるとキリのないところがある。仕事が切羽詰まってるから,ますます現実逃避にぴったり。
家に戻ってPOPでメールを読もうとしたら,ディスクの残りがないと言われた。2GBほど残ってあったディスクの残りが,いきなりゼロバイト。何が起こったかわからずにディスク探査。duコマンドで調べる調べる。du -s -h ./*/とか,ls -laSrとか。
ほどなく,~/.xsession-errorというナゾの巨大ファイルの存在に気づく。2GB! これってLinuxの許容する最大サイズのファイルやんか。中をのぞかずに,急いで消す。急ぐ必要なんかないにのに。消したら徐々にディスクスペースが増えて行くのが,ディスクモニターの表示でわかる。なんで一気に2GB増えずに徐々になんだ,という根本的な疑問を抱えつつも,元に戻るのだろうなんて思って眺めていたら,少し空きができたところで,またディスクの残りは減りはじめた。結局またゼロバイト。今度はどこにもファイルは存在しない。一体なんなんだ。そういえば,昨日,dhcpサーバを動かすために久しぶりにカーネルをリコンフィグして再起動したんだよなぁと思い出す。
xsessionのerrorファイルなのだからと,とりあえずXを落としてみたら,グンと一気に2GBの空きが戻った。原因は良くわからないけど,よしとしてしまう。

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NISHIMURA Ken <nis@bigfoot.com>