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2006年03月31日

クリス・ブリスのインタビュー

ビートルズの音楽に合わせた3ボールのパフォーマンスで話題のクリス・ブリスですが、アメリカのフジテレビとも言える、FOXのトークショーに登場したようです。もはや“クリスブリス現象”といってもいいぐらい、2月ごろから彼の動画はネット上で話題になっていたということです。アメリカ人ジャグラーの多くが、「もういいよ、あいつの話はオレにしないでくれ」という感じで辟易しています。さっきまで5ボール3アップの練習をしていたのに、それを横目で見ていた母親が「ねぇ、あんた、このジャグリングすごいよ! これ知ってる?」と言いだしたり、あるいは「ジャグラーなら、この人知ってるかな、すごいよね、この人、誰? これぐらいできるの?」と周囲の人にじゃんじゃんメールされたりしているようです。

このインタビューを読むと、クリス・ブリスは20カ国ほどで話題になっているようです。20カ国というのは主に英語圏でしょうか。だいたい海外のネットの話題は日本には遅れて入ってきますし、これからテレビで紹介される可能性はありますが、今のところ日本では全然話題になっていませんよね。

本人は、何年も前からやってきたことで自分のサイトにも置いてあったのに、なぜ「いま」、「この動画」が、突然大ブームとなったのか分からないとしながらも、こんなことを言っています。「世の中が、暗くて、シニカルで、恐ろしいものになってしまい、そのことでみんな気分がふさいでいて、だから、そうじゃない何かを求めているんじゃないかな」。クリスブリスは大量のメールを受け取っているそうですが、そのなかから、2つほど紹介しています。1つは、1日に1度は動画を見ることで、さあ今日も1日がんばろうという気にさせてくれるといっているもの。もう1つは、アフリカの難民キャンプにある人道的支援団体で働く人からもらったもので、「ありがとう、エネルギーをもらったおかげで、起きて仕事をする気になれました」という内容だったそうです。そういうメールをもらって、クリス・ブリスは、「もはや、これはパフォーマンスがどうとか、ジャグリングがどうという話じゃない」と気づいたと言ってます。

ビートルズですもんね、音楽が。'60年代のアツかった時代の記憶を蘇らせた人々も多かったのでしょうか。


ところで最近のアメリカでは、こういうふうに突発的に何かが人気になるということが続いているように思います。いや、アメリカというより、ネットかもしれません。

インターネットというのは顕微鏡みたいなもので、あるとき、どこか辺境で起こった小さなできごとが、あっという間に地球規模に拡大されるようなことが起こります。もともとテレビなどのマスメディアがそうした機能を担っていましたが、メディアに勤める人間の目の数が限られているのに対して、ネット上は至る所にウォッチャーがいます。なので、「これはおもしろい」と思ったものは、たちまち口コミで広がります。いまやテレビは、ネットで話題になったことを、数ヶ月から半年遅れぐらいで取り上げてるように思えるほどです。日本で言えば電車男なんかが典型です。ぼくは完全にブームに乗り遅れて読んだなと思っていましたが、その流行遅れのぼくに遅れること、さらに1年ぐらいでテレビや映画でブームとなりました。


アメリカン・アイドルという勝ち抜き歌合戦ようのな番組が、2、3年前から、すごい人気を博しています。素人か、素人に毛が生えた程度のワナビーが全米各地のオーディションを受けて、歌やダンスで勝ち残っていくという番組です。視聴者の投票で、もっとも人気のない人が落とされていき、最後に残った人は、それなりにその後にアルバムを出すなどして活躍しているようです。

この番組で、2年前におもしろい現象が起こりました。

オーディションで落ちた人は、泣き崩れたり、審査員にくってかかったりしがちだそうです。審査員に「向いてないからやめたほうがいい」などと言われてメソメソ泣く応募者のシーンというのが、本戦の模様に混じって少しずつ放送されます。

多くの落選者が落胆を隠さないのに対して、地方予選で落選したウィリアム・ハンという中国系移民は、ちょっと違いました。彼はリッキー・マーティンの「She bangs」という歌を、3人の審査員の前でアカペラで歌ったのですが、それはそれはヒドイ歌と踊りでした。音痴で、おぞましいダンスなのです。でも、ノリノリで一生懸命セクシーに歌いました。審査員が頭を抱えて笑いをこらえるなか、すぐに音楽が止まりました。辛口評で知られるイギリス系の審査員、サイモン・コーウェルは、「キミは歌はダメ、踊りもダメ、いったい何て言ってほしいの?」とストレートにこき下ろしました(落選シーンの動画は、ここです。超笑えます。でも、一通り笑った後、本当に彼を笑えるのか自問してみましょう)。

面罵されたウィリアムは、少しもひるまずに、こう応じました。「ぼくは歌の専門的訓練は受けたことないから」。そういう問題じゃないよと、誰もが突っ込みたくなった場面です。自覚症状のない彼の反応に驚いた審査員は、「そりゃ、今世紀最大の驚きだね」と笑いだします。ところが、すかさず彼は言います。「ぼくはもう精一杯やったし、何も悔いはない」。卑屈になるでもなく、明るく本心から言った彼のこの言葉に、誰もが感心して、そしてアメリカじゅうが、彼のことを好きになったのでした。ぼくもすごく好きになりました。本当に愛すべきキャラクターをもってるのです。

彼はその後、レコード会社から300万円でデビューのオファーを受けて、実際にアルバムを何枚か出します。いまもファンサイトがあります(ウィリアムについて、もう少し詳しく書いたぼくの日記は、ここ)。

ずば抜けた才能どころか、並み以下のパフォーマンスで多くの人々を魅了してしまった、ウィリアム・ハン現象は、どう説明すればいいんでしょう。パフォーマンスの魅力って、何でしょうね。「技術」「パフォーマンス」「キャラクター(オーラ)」の3つの要素を仮定できそうです。ぼくの理解ではクラウニングは「キャラクター作り」であって「キャラクター」そのものと必ずしも一致していません。習得できるキャラクター作りは、技術とパフォーマンスの範疇です。キャラクターというのは、もっと内面から出てくるようなものじゃないかと思います。ジャグリング界では、キャラクターというものの重要性が過小評価される傾向にあるように思います。たとえば「クリス・ブリスは、あのキャラクターがいいんだよ」と言えば、「あれのなにがいいんだ?」「これの良さがおまえにはわからんかッ、びしびし!」とか話がすれ違わなくてもいいような気もします。


さて、いま話題なのは、アメリカン・アイドルの商業的成功を横目で見ていたNBCテレビが、アメリカン・アイドルに代わる新番組を企画していることです。今度は歌と踊りだけじゃなくて、ジャグリングやマジック、コメディーも含めた、すべてのパフォーマンスを受け付けるということです。この番組については、IJAの定期刊行誌「JUGGLE」にもニュース欄で紹介がありました。的確ながらもいつも酷評ばかりしている辛口審査員のサイモン・コーウェルが企画の中心的役割を果たしているようで、ずいぶん話題です。

FOXには「30 SECONDS TO FAME(名声への30秒)」という番組もあって、それは30秒の間にジャグリング、手品、歌、アクロバットなどを繰り広げ、観客の反応だけで合否を決めるという番組です。過去にはバウンスボールで床に置いたキーボードを弾くダン・メネンデスも登場したように思います。

アメリカン・アイドルと30 SECONDS TO FAMEという2つの人気番組を足して2で割ったようなのが、今度はじまる「America's got talent(アメリカに才能あり)」という番組です。4月からオーディションが始まるようですが、今から「オレは出る!」といって興奮している若手ジャグラーが、ガットーフォーラムにいます。

ジャグリング界のウィリアム・ハンは登場するか、ちょっと楽しみです。

あ、そうそう、もう1人、中国語圏のネットから話題になってグローバルに広まった有名人がいます。Back Dormitory Boys(后舎男生)です。めっちゃおもしろい2人です。これは最近、日本のテレビでも最近放映されたみたいなので知ってる人もいるかもしれませんが。

投稿者 ken : 2006年03月31日 23:06

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