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2006年02月26日

夢で見たステージ

夢奇房の第三回公演「瞬~舞台の狭間のほのかな刹那~」を見てきました。上演時間は90分で、マジック、マイム、ジャグリング、フルート演奏なんかが次々と順番に登場する、オムニバス形式のステージパフォーマンスでした。

ボードヴィルだか芝居小屋だか何かは判然としませんが、落ちぶれたショービジネスの“支配人”が、薄汚れたバックステージで、ほんのつかの間の夢を見る、というのが舞台全体のストーリーだったようです。夢には、かつてステージを彩ったパフォーマーが現われ舞台をにぎやかに盛り上げます。妖精が夢の案内をします。

夢の中のシーンが切り替わるように、次々とパフォーマーがバトンタッチします。それぞれのパフォーマンスには、それぞれの世界観があって、90分間が、長い夢の中にいるような、そんな感じでした。さまざまなジャンルのパフォーマンスを入れ込むのに、こういう仕掛けは一般的なのでしょうか。ぼくには、そのへんよくわかりませんが、よくできてるなと思いました。

マジックを生で見るのは、幼稚園の卒園式で自分の母親がステッキがスカーフになるマジックをやるのを見て以来でした。いや、それはないですが、そのぐらい見てない気が……。

プロじゃないからでしょうか(と書くと失礼か)、ぼくが大人になったからでしょうか、だいたい見ていてタネがわかりました。なので、いかに自然に演じているのか、どのぐらい練習したのかということを想像しながら見ていました。特に指につけたキャップが次々と違う指にジャンプしたり、増えたり消えたりするというマジックは、ぼくにはほとんどジャグリングのように見えました。こういうのは凄く好みです。だいたい何が起こっているかはわかりますが、手さばきの良さに、うならされます。すごい練習量なんだろうなぁと。たとえば指につけたキャップの色が一瞬で変わるのは180度キャップを回転させているとしか思えないのですが、凄まじく素早く正確です。あるいは、ちょっと手をモゴモゴさせるだけで、あっという間に5本の指にキャップを付けて、パッと取り出すのとか、あり得ない手さばきです。

追記:マジックに詳しい方からメールをいただき、色を変える方法はぼくが想像したのと違うこと、5本の指にぱっとキャップがついたように思ったのは、実際は4本だったことなど、ご指摘頂きました。いやはや、いい加減なことを書いてすいません。

両手でつまんで広げた布の上端をボールが動き回るマジックも、今まで何度か見たことがあったのですが、今日はじめて「そういうことだったのか」と急にタネを意識しました。で、やっぱり、どのくらいの難易度なのだろうかという目で見てしまう自分がいるのでした。

ダンスや音楽っぽい要素がすごくいいなと思いました。フルートの独奏は、あまりにふつうに上手いので、てっきりぼくはプロの音楽に合わせた「演技」かと思いました。舞台効果を狙った間奏みたいなもので、本当に吹いているとは最初は思いませんでした。いい雰囲気でした。途中、一度だけ息が上がって音がフイッと消えてしまうところがありましたが、なんだかかえってそれが生っぽくていいなと思えました。

ちょっと前に潮木ゆーたさんが、「現在多くの人が芸術は、一流のプロがやるもので自分たちは観客、ということにしているように感じます」と言ってましたが、ぼくもよく同じことを思います。芸術やスポーツは、もともとは誰もがやったもので、それがそのうち自分でできなくなったからお金で買うようになったり、果ては、スポーツや芸術について語ることがスポーツ通や芸術通のように見られるという倒錯した状況があるのかなって思うことがあります。一流になれなくても気負わずにやればいいし、また周囲はそういうのも楽しめばいいんじゃないかと。

そういう意味で、フルートの演奏に、ぼくはちょっと感じるところがありました。プロとアマの中間なんでしょうか。そういう中間的な芸術を、やるほうも見るほうも、もうちょっと広く楽しむといいんだろうな、とか。ふだんほとんど生演奏を聴くことなんてないですから、いいもんだなと思えました。『オーバーザレインボウ』の歌うようなアレンジがグッドでした。

リンキングリングというんでしょうか、リングがつながったり外れたりする古典的マジック。マジックそのものも、へぇという感じでしたが、照明がリングで反射されて輝く感じがとても良かったです。衣装やダンス、表情といった全体的な構成がいい。ベリーダンスのような妖艶さ、アラブ圏の女性ような神秘性、地中海かスペインかといった風な情熱的なステップ……、といい加減にテキトーなことを書いていますが、いろいろな要素が混ざっているように思えて、不思議な感じでした。

表情といえば、カードマジックをやった人の、テンションの高さと“作り笑顔”の迫力がすごかったです。これぞ、ショーじゃないかというノリ。舞台慣れしているというか芸達者というか。夢奇房には社会人が多いということですが、もし彼が社会人で営業部所属だったりしたら、すごく営業成績が良さそう……、と言うのはヘンな感想ですが、この人の実力はきっと飲み会の席で最高潮に達するんだろうなと想像していました。逆に言うと、今日の観客は彼のノリについて行くには、やや冷静すぎたようにも思えたり。

最後のトリを飾った、大技系のマジックではジャンジャカ鳩が飛び出しました。うはー。貧乏でみじめっぽい少女に、次々と鳩がやってきて、着ているものも明るくキレイなものに変わっていくというストーリー仕立てで、トリを飾るのにふさわしい華やかさでした。でも、ぜんぶで4羽か5羽いた白い鳩が途中で1羽だけ、ひょっこり出てきてはいけないっぽいところから飛び出してしまうというハプニングがありました。え、これってハプニングじゃなくて狙いなのかなと思って鳩を目で追っていると、最後の最後のドドーンという銀紙が飛び散る大団円が終わっていて、見逃してしまいました……。あまりにも鳩が狂ったように飛び交っていたもんで……。

ジャグリングの感想だけ最後になりました。バウンスでYDCの、のぼさん、パッシングでアインザッツの2人が出てきました。

のぼさんは妖精と一緒に華麗に舞う貴公子といった風でした。古びた額縁から飛び出した少年という設定だったようです。のぼさんはバウンスの腕は確かですし、身のこなしがバレーっぽくて洗練されているように思いました。白っぽいシャツを着ていましたが、もう少し派手な衣装のほうが良かったんじゃないかと思いました。ジャグリングでは、5リフト→トスの5カスケ→5リフトとか、4個(?)のフォローザリーダーやミルズなどやっていたように思います。最後は7フォース!

アインザッツは去年のJJF同様(?)、不気味な白いお面を付けての登場です。パンフレットに「ポルテ&ガイスト ザ・ゴースト」とあるので、時空をさまようゴーストのような存在という設定だったのでしょうか。前後に並んだ2人がムーンウォークで手渡しパッシングをするのとか、時空を駆けてるような不思議な感じが出ていて、いい演出でした。全体にテイクアウトを多用したパフォーマンスでした。きびきびとした動きと相まって、独自の世界観を作っていました。あと、6本でマサカリとかアルバートとか、ふつうっぽいパッシングもありましたが、ぼくには何が起こったのかわからない不思議なパターンがありました。ぱぁっとクラブが宙に浮かんでぱぁっと手元でクラブが回転しつつ、ピルエットでぱぁっと……って、これじゃまるでジャグリングをやったことない人が書くジャグリングの感想みたいですが。ともあれ、技術的な圧倒感で会場が一番どよめいたのは、この2人がドバッと8本のクラブを宙に放り投げた瞬間でした。

最後、出演者が順に舞台に出てきて、走馬燈のように「記憶たち」のイメージが駆け抜けるという演出がありました。出演者のひとりひとりに拍手をするポイントだったのでしょうか。でも、観客は「いや、ここは拍手ポイントじゃないっぽい」と戸惑っていたように思います。急に1人か2人が拍手したり、しーんとしたり……。このへんが何度も公演を重ねるプロとの違いなんでしょうか。演出の計算って難しんでしょうね。

とはいえ、全体としては、本当によくディテールまでよく練られているし、よく練習してる、いいパフォーマンスだったなと思いました。帰りの赤羽の電車のホームにぼんやり立っていると、いろいろと舞台のイメージが思い出されるわけですが、世界観をともなったパフォーマンスを思い出すのは、夢を反芻するような、そんな不思議な気分になるものですね。

投稿者 ken : 2006年02月26日 23:16

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