« ジャグリングだもの | メイン | 少しずつでもいいんだよ »

2006年02月24日

ボールと反ボールの世界

夢を見ました。卒論発表の夢です。学生時代の試験や発表の夢というのは、たいていの人が一生見続けるものらしいです。典型的な悪夢ですね。

論文どころか、まったく何のアイデアもない状態で、ぼくは発表順を待っていました。冷や汗をかいてます。いったい何でこんなことになってしまったんだろうかと思いつつ、まあでもいつものことかと開き直っている感じが、とてもリアルでした。夢の中でも人の性格って変わらないのか……。

周囲を見ると、どうもA4で4枚ほども書けばよいらしことがわかりました。しかも数学か物理にちょっとでも絡んでいればテーマは自由、絵もいっぱい描いていいというものでした。「なんだ、だったら楽勝じゃん」と気を取り直し、人が発表している間に、ぼくは卒論に取りかかろうとしていました。すぐに思い浮かんだのは、ジャグリングの論文です。教授の前でボールを投げて発表は適当にごまかしてしまえと考えていたりして、これまた夢のなかでも普段の性格が出ているのに、我ながら苦笑いしたりします。

ジャグリング論文は「ボールと反ボールの世界」というタイトルです。

そのへんで目が覚めたので、論文を書いたり発表したりするところまでは至りませんでした。

夢は夢ですが、前夜にちょうど『The Mathematics of Juggling』という本で、ボールと反ボール(antiball)についての記述を読んでいたのが夢になったのは明らかなようです(ちなみに仕事が詰まり気味になると、こういう夢を見るというのもあります)。ボールと反ボールは、ちょうど粒子と反粒子のような関係にあります。

物質と反物質、あるいは粒子と反粒子というのは、理系の人なら知ってると思います。世の中には、重さが同じでプラスとマイナスの電荷だけがひっくり返った“反粒子”というのが、すべての粒子について存在します。たとえば、電子はマイナスの電荷をもっていますが、プラスの電荷をもった反電子というヤツがいます。陽電子とも呼びます。この反電子が、ふつうの電子と出会うと、なんと光を放出して2個とも消えてしまいます。逆に、エネルギーさえあれば、何もない空間にとつぜん粒子と反粒子のペアが、ひょっこり生まれたりします。

ぼくらが生きているこの世界というのは、実際そういう空間です。常に生成と消滅を繰り返す無数の粒子と反粒子が、海に揺らめくさざ波のように空間を埋め尽くしています。それが現在受け入れられている標準的な物理学の描く世界像だそうです。ぼくらの身体は粒子でできていますが、その1つ1つの粒子を取り巻くように、遙かに膨大な数の粒子が生まれては消えを繰り返しているというんです。

……、という反物質の話はこのくらいにして……。サイトスワップでマイナスまで考えると、「反ボール」と呼ぶべき不思議なヤツが登場します。

サイトスワップが示す数字は高さ(滞空時間)と解釈するのが実用上は便利ですが、もともとは何ビート後に手に戻ってくるかを示す数字です。左右交互に投げるので「1」なら1ビート後の反対側の手ということになり、手渡し動作を示すことになります。「2」なら2ビート後なので同じ手です。このため「真の2は、軽く投げて素早くキャッチすることだ」と主張する人もいます。

サイトスワップの数字が、ボールが何ビート後に着地するかを示すものだとすると、マイナスの値をもつサイトスワップ、「-1」とか「-2」は過去に向かって飛んでいくボールを示すことになります。このボールは「反ボール」と名付けるべき性質をもちます。反ボールは、ふうつのボールと出会うと対消滅します。対生成もします。粒子と反粒子と同じです。

たとえば、「1,-1」や「5,-1,-1,-1,-1」はジャグリング可能(現実世界では不可能ですが)なパターンだそうです。図で描くと、シンプルで美しいパターンになります。「1,-1」では、あるビートで発生したボール/反ボールが、それぞれ未来と過去に向かって反対側の手に飛んでいき、そこで、さらなる未来と過去から来た反ボール/ボールのペアと出会い、両方とも消滅します。

antiball.png

追記:このダイヤグラムは間違っています。正しくは……、機会があればまたそのうち……。興味のある人は調べてみてください。

いったい、これはどんなイメージのパターンだろうかと、しばらく図を眺めて考えてみました。右手から左手にフィードしたボールは、未来の右手から来たボールと出会って消滅……、って……、うーむ、わからない。

とか考えていたので夢を見たんでしょう。

マイナスを含めたサイトスワップには、もっと複雑なものもあるようですが、それが実用上なんの意味があるのかは知りません……。

投稿者 ken : 2006年02月24日 23:52

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://d-code.org/blog/mt-tb.cgi/362

コメント

コーザルノーテーションというパッシングでよく使われる標記は、普通のサイトスワップ-2を書き、このため後ろ向きの矢印もでてきますね。
それはそれで慣れると分かりやすいのですけど。

投稿者 にしの : 2006年02月25日 10:39

で、パッシングの場合はクラブが多いので、-2しておくと、図がすっきりして嬉しい、というメリットが有るのです。
理由を書くのをわすれてました。(^^;

投稿者 にしの : 2006年02月25日 10:41

ん? 4本の手のサイトスワップだと4が、ふつうの2に相当するんですよね。
ということは、すでに-2でしょうか?

むー、パッシングは全然やらないので、まったくピンと来ません。
去年のJJFでご説明頂いたときには「なるほど!」と思ったはず
なんですが。 ^^;;;

どうでもいいっちゃどうでもいいですが、1,-1のダイヤグラムは、
なんか間違えてるようです。いま改めて本を見直したら、
うーん、なんか違っていました。

投稿者 西村 : 2006年02月25日 11:01

1、-1の技のダイヤグラムは「輪」ですね。
ちなみにプラス2すると、31、になって2個シャワーと考えることができます。じつは「輪」はコーザルノーテーションでの2個シャワーの表記と一致します。

4本手(4サイクル)のサイトスワップの話はまた違う話なのでおいておいて、
パッシング2人6本の場合はそれぞれ2を引いて、(3-2)×2=2本の線を引くことになっています。6本を2本で表せるので紙の節約になりとってもロハスです。

投稿者 にしの : 2006年02月26日 00:20

ちなみに、図のパターンは、
[1,-1]0
の2ビートパターンで、ジャグリングできないようです。
負のサイトスワップがあっても図を描いたときに、(本数は無限でも)端の無いつながりになるとジャグリング可能となります。1対1写像ってことですが、ともあれ、これで卒業できそうでしょうか。(^^)

投稿者 にしの : 2006年02月26日 00:25

あ、なるほど。[1,-1]0になってますね。

そうそう、パッシングでは1人あたり1本で済ませるという
話でしたっけ。

ぼくの「特殊サイトスワップ概論」は不可ですね。まだまだ。
ああ、また悪夢が(笑)

投稿者 西村 : 2006年02月26日 01:39

サイトスワップの方はついていけませんが、
大変興味深い話です。

特に粒子が常に生成と消滅を繰り返すって
いう話は初めて聞きました。そ、そんなこ
とが…。光が波であり粒子でもあるってな
事も理解できないし、うーん、この現実世
界というものは一体何なんでしょう。

何ら根拠に基づくものではありませんが、
虚数が数学においても物理学においても重
要であるように、サイトスワップを専門的
に扱うレベルになれば、負の値も重要にな
ってくる気がします。

ほんとに、何となく…。

投稿者 ケータ : 2006年02月26日 23:26

ケータさん、

無数の粒子が常に生成と消滅を繰り返している世界像というのは、
提唱者の名前をとって「ディラックの海」と呼ばれてるそうです。
ただ、観測できる時間より遙かに短い時間で生成と消滅を
繰り返しているので、「粒子で満たされている」というのを
文字通りに受け取ると違うようです。

こうした海を想定することで何やら整合的に現象を記述できる
ということだったようですが、この海を考えなくても同様の
結果を得られるという話もあるとも、どこかで読みました。

というわけで、あまり「標準的に受け入れられてる物理学」
じゃないかもしれません。むむむっ。

投稿者 西村 : 2006年02月27日 16:09

はぁ、ますますついていけなくなっちゃいました。

論理が複数あってなかなか決着がつかないという
ことは、結局は人間が観測できる域を越えている
ということでしょうか。

物理学者は常に真実を解明しようとしているのか、
もしくはどこかに妥協点を置いているのか…。

うーん…。

ご丁寧な返答ありがとうございます。

投稿者 ケータ : 2006年03月01日 00:08

ケータさん、

いや、ぼくも、ぜんぜん分かってないんで、
気にしないでください。

物理学者のうち、妥協上等当然じゃんというのは
実験屋ですね。あまり妥協しないのは理論を作る人。
いや、物理なんてそもそも妥協ばっかで美しくないと
発狂するのは、数学をやる人ですね。

投稿者 西村 : 2006年03月01日 02:38

コメントしてください




保存しますか?