2005年09月02日
ジャグリング語源話あれこれ
「ハンナラ党」と言えば、韓国の与党第一党の名前。ハン・ナラは「偉大な・国」「1つの・国」といった意味があるそうだ。それはともかく、これを「ナランハ」と思わず読み間違えないようでは、日本のジャグラーとしてはモグリだと思う。
ナランハ店長の中嶋さんによると、ジャグリングショップ「ナランハ」の命名は学生時代にさかのぼるという。ナランハが発行するメルマガのVol.10に、「ナランハ」ってどういう意味ですか?という短い対談が掲載されている。それによるとナランハ(naranja)はスペイン語でオレンジという意味だそうだ。ジャグリング販売店の名前を考えていたとき、何気なくエクアドルの留学生に“オレンジ”ってスペイン語で何というのかを聞いたことで即決したらしい。中嶋さんが組んでいた大道芸ユニットの名前が「つぶつぶオレンジ」だったからとか。
スペイン語でnaranjaはオレンジという意味だけど、どうもこれ、何か引っかかると思っていた。ぼくにはスペイン語の語感はわからないけど、ヨーロッパの語彙っぽくない。ロマンス系でもゲルマン系でもラテン系でもなさそうな。そう思っていたら、最近読んだ本に答えが書いてあった。naranjaはアラビア語からスペイン語に入った語彙なんだとか。
ジブラルタル海峡を挟んで、スペインは北アフリカと歴史的に深い交流がある。交流というよりアフリカからのイスラム教徒の侵攻に対して、キリスト教徒が自国領地からイスラム教徒を追い出したのがレコンキスタ運動だった。いま調べたら、イスラム教徒は8世紀にスペインやポルトガルにやってきて、約800年間も支配を続けたというから、そりゃまあ文化的影響を受けないわけがない。キリスト教徒は長い時間をかけて徐々に南下したから、今でもイベリア半島というのは文化的多様性が豊富で、地域ごとの自治色が強いということらしい。
以前、ネットでチャットしていたとき、スペイン南部の人と、モロッコの人がしゃべっているのを聞いて驚いたことがある。スペイン人のほうは、「よく出張に行くよ」という。海峡ひとつとはいえ、大陸間移動ぐらいの話だからと思って、飛行機だとどのぐらい時間がかかるのか聞いてみたら、返ってきた答えに驚いた。「ケン、アフリカ大陸といってもモロッコは目と鼻の先なんだよ。モーターボートで40分ぐらいで渡れるんだ。向こう岸が目で見えるぐらいのもんだよ」。知らんかった……。そりゃ侵攻されるわ。
naranjaという単語は、中東で生まれ、それがイスラム教とともにアフリカへ渡り、それがスペイン、南米、日本とわたってジャグリングショップの名前になったというだけだ。
ひょとして、スペイン語ってアラビア語語源の単語だらけなのか? 11世紀から300年に及んだフランスによるイギリス支配、ノルマン・コンクエストの結果、英語の語彙の3分の1はフランス語語源のもになったという話がある。300年でそんなことになるんだから、800年だとどうだろう。スペイン語、まったく知らん。
以前、rec.jugglingで“jugglingってどういう意味?”と聞いたら、本題とは別にスペイン語(ポルトガル語でも)でジャグリングのことは「malabarista」と呼ぶと教えてくれた人がいた。これは、ポルトガルのバスコダ・ダ・ガマが1498年にインドの地を訪れた街、「マラバー(Malabar)」にちなんでついた呼び名だそうだ。
で、ジャグリング(juggling)の語源の話。
juggleの語源は14世紀ごろフランス語で使われていた「jogler」という動詞で、これは宮廷なんかで道化師としてパフォームすることを意味したらしい。
その後、ジャグリング受難の歴史がはじまる(笑)。20世紀になった今も手品と一緒くたにされてしまうことの多いジャグリングだけど、これには長い歴史がある。かつて英語のjuggleという言葉には「だます、あざむく」という意味もあったという。「juggler」は「詐欺師」。この意味が残っている辞書もあるぐらいだから、そう古い用法ではないんだろうけど、rec.jugglingで英米人に聞いたところ、誰もネガティブな「だます」という用法は聞いたことがないと言っていた。現代英語でjuggleと言えば、だますとかジャグリングするという意味よりも、「仕事と家庭を両立する」というような文脈で、複数のタスクをこなすという意味で使うことがいちばん多い。といっても、この用法もサーカスのジャグラーを念頭に比喩的に用いられているだけなので、英語話者にjugglerと言えば、もちろんジャグラーを思い浮かべるらしいけど。
手品とジャグリングが一緒くたになっている辞書もある。rec.jugglingで答えてくれた人の1人は、彼の英日辞書でjugglingの訳語が「手品」になっていると教えてくれた。なんと……。しかし、よくよく考えてみると、ジャグリングこそ「手品」と呼ぶべきじゃないか。手でトリックをやるわけだし。
ジャグリングと手品の違いはタネがあるかないかとも言えるけど、非ジャグラーにとっては、ジャグリングにタネがないとは、にわかには信じられない、という事情もあって、混同され続けてるんだろう。
もうひとつ、rec.juggligで教えてもらった、ジャグリング関連のおもしろい語源話。オランダ語では、juggleは「jongleren」と呼ぶ。で、この単語、分解すると「jong(young)」「leren(learn)」となっている。つまり、「若い人が習う」という意味で、なんだかオヤジャグラーとしては悲しくなるような話じゃないですか(笑)
と、思っていたら、「いや、むしろぼく的にはyoungはnot oldってことだし、“jongleren”は“not too old to learn”と訳したいね」と言った人がいた。学ぶに遅すぎるということはない。
投稿者 ken : 2005年09月02日 23:47
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コメント
昨年何度か仕事で北京にいってまして、そこでジャグリングを中国語でなんていうのか聞いたんですが、皆帰ってくる答えが「雑技」それって広すぎないかい?>中国人
投稿者 くろせ : 2005年09月03日 23:08
ジプシーなんかが典型でしょうけど、
もともとジャグラーとかサーカスとか大道芸って、
見下され続けてきた職種だからってこともあるのかしら。
ところで「ざつぎ」で変換すると「雑伎」と「雑技」が
出てきました。違いはなんだろうか……。
「伎」はアクロバット?
広辞苑によると、
【伎】
(「技」に通ずる)(1)わざ。うでまえ。「伎芸・伎倆(ぎりょう)」
(2)俳優。芸人。「伎楽・歌舞伎」
なんてあります。歌舞伎は歌舞技とは書きませんね。うーん。
投稿者 西村 : 2005年09月04日 11:16