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2007年12月18日

失敗者

最近週末は家族で過ごすことが多くて、1人で出歩くことが減った。独身時代の自由を懐かしむ気持ちもあったけど、長い人生のなかで今は貴重で幸福な子育ての時間なのかなと思うようになった。

70歳になる遠縁の親類と話す機会があった。法事の席で、酒宴が好きだったという故人を偲んで楽しく語らってくださいというので、ぼくはその人と遠慮なくビールやワインを飲みながら話し込んでしまった。

義父と同じ会社に勤めた人で、ある種、昭和世代のサラリーマンの典型。

その人が、こんなことを言った。「自分は失敗者ですよ。昔は自分のことしか考えてなくて子供なんて構ったことがなかった。男親は給料を稼ぐのが仕事だと思っていたからね。でも、子供が一番かわいい時期に1分でも一緒にいたほうがいいよ。これは失敗した人間からのアドバイスです。自分もできることならやり直したい」。大企業で役員まで勤めたというから、「当時はみんな仕事中心だったんじゃないですか」と聞いたら、「そうじゃない人もいましたよ」という。

3歳までのかわいい盛り、手がかかる時期というのは、長い目で見ればほんの一時期。そこの体験が充実しているかどうかで、年をとってから目を細めて思い出せるか、「失敗者ですよ」と悔やむことになるか決まるものなら、今は子供のために時間を使ったほうがいいのだろう。10歳を過ぎたムスメに父親が相手をしてもらえるどうかは定かではないし、成人すれば会える機会も減っていく。自分を失敗者だというおじさんは、遠く香港に暮らすムスメとその孫とは主にネットでコミュニケーションしているという。

夜寝かしつけるために一緒に布団に潜り込んだ。ころりと横たわったムスメは、やんやん言うでもなく、すぐに寝てしまうでもなく、パッチリと目を見ひらいたままこちらを見つめていた。ふいに、「パパ、ちゃっちゃん、パパ、ちゃっちゃん」と何度か自分と父を順に指差す。「そうだね、パパだね、りさちゃんだね」とぼくは返す。するとムスメは、舌足らずな裏返りぎみの声で「ちゅ」と言って小さな顔をぼくに押し付けてきた。相好を崩す父親を見て満足そうに笑うムスメ。今はただ単にかわいいとしか思わないけど、きっと、こういう経験が貴重なんだ。

投稿者 ken : 2007年12月18日 23:47

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