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2005年09月26日

コクとキレの読書感想

八木雄二『中世哲学への招待――「ヨーロッパ的思考」のはじまりを知るために』(平凡社新書、2002.12)

中世ヨーロッパで勃興しつつあった“大学”を中心に盛んになったアリストテレス研究が、西欧の精神世界に及ぼした影響というのは、つまり、スターバックスが日本のコーヒー文化に及ぼした影響に匹敵するのだ。どちらも、かくあるべしという前提条件から突き崩して、それまでの構図の再構築を余儀なくさせた。って、ほんとか。

伏木亨『コクと旨味の秘密』(新潮新書、2005.9)

なぞなぞです。ワインに1滴たらすと、その味が劇的によくなるものは何か。(A)醤油(B)魚醤(C)ナンプラー。正解はA~C。BとCはぼくの推測だけど。ていうか、BとCは同じだ。国際的な学術用語にもなっている“umami”の本質はグルタミン酸ナトリウム。ウマミも含め、塩気や甘みなど、すでに化学物質として特定されている味の枠組みでは分析できない「コク」とはいったい何だということを、学際的に(かつ食いしん坊の飲んべえ的に)研究すると、どうやらコクの答えは、甘み、脂、各種アミノ酸あたりに行き着くのだとか。食感だとか、時間、空間的な味の広がりについて、ぎりぎり科学的に説明している。著者によるとコクを多層的に解釈すると、いちばん高次の部分は文化や経験、学習によるもので、だからこそ「コクのある演技」といった形容があるんだという。説明に説得力があるのは説明にコクがあるから、というより、筆者が食道楽の言い訳を「研究」と称しているからに違いない。

松岡美樹『ニッポンの挑戦――インターネットの夜明け』(RBB PRESS、2005.8)

著者本人から見本誌として送って頂いたので読んでみた。日本のインターネット創世記の話はリアルタイムに体験しているし、パソコン通信黎明期の話にも職業柄詳しいので、今さらふつうに歴史を概観するような本だったら読むまでもないというので、やや気が進まなかったのだけど、パラパラ冒頭から読み始めてビックリ。おもしろい。ちゃんとキーパーソンを取材して、彼らの生っぽい証言でストーリーを構成しているから、発言内容やエピソードがすべて新鮮。知らなかったこともいっぱいある。ぐんぐんページを繰って、一気に読了。かつて一緒によく取材して回ったころは、IT系のライターにはない筆力を感じて密かに原稿の書き方を勉強していたりしたものだけど、こういう本が書けるようになりたいもんだと思える1冊だった。日本のインターネット誕生から現在に至るまでの話は、ぼくの20代の仕事人生そのものだったりするようなところもあるので、どのトピックも懐かしい。ビジネス上は敗れ去ったような人々、現に戦っている人々の談話に胸が熱くなった。アキバを歩く村井純らインターネットを作った男達(正確にはオヤジ達)に「インターネットに入りませんか?」といって加入勧誘をしたヤフーのパラソル部隊の話が笑えた。

投稿者 ken : 2005年09月26日 20:33

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