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2005年07月09日
そんな漢字は読めません
加納喜光『この漢字が読めますか?――日本語の奥は深い!』(PHPハンドブックシリーズ)
動植物名、地名、著名な人物名、隠語、業界用語と、どっかで見たことあるような難読漢字のオンパレード。いちおう一通り読み終わったけど、もう一度頭から読んだら、やっぱり2、3割ぐらいは読めない漢字だと思う。
はじめのうちこそ全部覚えようと3度ずつ読み返したけど、漢字検定を受けるぐらい気合いある人じゃないと、これをすべて読めるようになるなんてムリだ。そもそも、読み方どころか、それが何を指しているのか知らないモノも多い。「薯蕷芋」がとろろ芋ってのはまだいいけど、「顳?(ひかがみ)」って何だ。膝の後ろのくぼんだ部分を指すんだって。そんなの初めて聞いた。
この手の本って、ただ難しければいいだろう的に難読漢字を集めただけのものになりがちだけど、そういうのに比べると、この本は良心的。初級クラスの単語は、オトナの日本人として読めないとちょっと恥ずかしいというレベルのものが並んでいる。
語源や漢字の成り立ちを中心に語られるコラムが出色だ。該博な著者の垂れる古今の日中漢字事情のウンチクには、もううっとり。ググったら5秒で出てきそうな浅い民間語源学をとくとくとひけらかす連中の鼻っ面に投げつけてやりたいような本だ。1年近くかけてトイレの中で読んだ本だから、いい感じに芳香剤の香りが染みついてる。鼻っ面にキンモクセイの香りをぶつけてやるよ。
たとえば「桜」。この字の旧字体は「櫻」。「2階のオンナが気にかかる」と覚えろと高校の国語教師に教わったのを思い出すけど、この字の右側は2つの「貝」と「女」が組み合わさった、嬰児の「嬰」。これは赤ん坊を表わす。“木偏に赤ん坊”の「櫻」は、もともと赤ちゃんの唇のようなプリッとしたサクランボの実を表していて、「櫻」はサクランボを指す字だった。ところが、それを誤解した日本人が、櫻の字をサクラに当てるようになった。ところが、この間違った用法が、桜の木とともに海をわたって中国に逆輸入され、いまでは中国人ですら、何の疑いもなくサクラを指す文字として「櫻」を使ってるんだとか。いにしえの日中の文化交流や文化誤解の話がおもしろい。「鮭」とかも、割と知られた話だけど、日本人が間違えてサーモンを指す字として使ったために、いまでは中国人も、これをサーモンを指す字として使っているという話。
あるいは、武士の「武」。ほこがまえは、武器や戦争にかかわるものを示し、中に入った「止」は、これは足を表している。だから意味はウォーリアーになる。そう言われてみると、象形文字としての漢字の味わい深さがにじみ出てくるような、そんな字だ。知らなかったよ、漢字っておもしろいよ。
象形文字は単純に絵としておもしろいだけじゃない。漢字は文化を背負っているから、その解題は古代中国の文化を思わせる。たとえば「県」。これ、「首」という字がひっくり返っている。木に吊られた首を絵的にあらわした象形文字なんだとか。ひよえー。恐ろしい。なんちゅう字だ。「梟首(きょうしゅ)」というさらし首の刑罰の様子を表している。
意味で組み合わさったものもおもしろい。たとえば「罪」と「罰」。これは、なんでこんな字を書くのか。上の「四」の部分は「あみ(網)」を表わす。悪事(非)を網でとらえるイメージ。天網恢々疎にして漏らさずだよ、と、そんな意味が込められている。罰のほうの下にあるのは、「言」と「刀」。これは判決の言葉と、刑罰の刀を表している。
もうひとつ驚いたモノ。「騒」という時。馬にノミがつくと、かゆくて馬が暴れ回るからということらしい。知らなかった。虫はあちこちにいる。「濁」の右側、「蜀」は何やら動植物にこびりつく虫のことだったらしい。それで水がこびりつくイメージから「濁」という字が生まれた。なぜか虫が入っている「虹」の字。むかし、中国人は虹を生き物と捉えていたってこと。
いやぁ、漢字っつうのはおもしろい。白川静の本でも眺めてみるか。
投稿者 ken : 2005年07月09日 13:06
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コメント
以前も言いましたが、語源ネタ、大好きです♪
でも、鮭をサーモンと間違えたってどゆことですか?!
鮭は元々は別のものを指す漢字だったんです?!
投稿者 シルキー : 2005年07月12日 22:15
語源関係は眉唾の話も多いけど、おもろいですよね。
「鮭」は中国ではフグのことだったらしいですよ。
そもそも中国の魚は淡水魚が多いし、見たこともない
魚の字が入っても、日本人にはわからなかったんじゃ
ないかと。
投稿者 西村 : 2005年07月13日 21:45